六十八の巻 わっちと追憶 ページ25
「この本にある吉原大門。…この真下にわっちは捨てられてたそうじゃ」
…飢えが国を蝕んでいたこの時代、大人が口減らしの為に自分の子供を何処かに捨てるのは、よくある話でありんした。
「人目のつかない山に捨てずに、母は赤子であるわっちを人目のひく吉原に置き去りにしたのじゃ。」
文花「…きっと、Aの事を想ってそうしたんだよ…。」
「…そうであったと信じたいでありんすな」
そして、わっちはとある遊郭の楼主に拾われたのじゃ。
まだ赤子だったわっちは、楼主様と店で働く遊女達に見守られながら、何不自由のない生活を送らせてもらいんした。
……今思えば、あの頃は何も考えないで楽しく過ごせる、一番幸せな時でありんした。
「それから数年経った頃、とうとうわっちにも遊女としての教育が施されるようになりんした。」
今までの生活は一変し、教育する男はとても厳しく、失敗すれば殴られるのは当たり前。
ひどい時は吐血しているのに一日中庭の木に縛られる事もありんした。
……それでもわっちには、逃げるという選択肢など初めからありんせんした。
逃げたことがバレれば即座に殺される。
仮に逃げられたとしても、表の世界で生きたことのないわっちには、どうやって生きていけばいいのか分からない。
……結局自分の居場所は、ここだけなんだと悟ったのじゃ。
「吉原に拾われたあの時から、自分の運命はもう決められていたのだと気づいた瞬間、わっちは死に物狂いで立派な遊女になる為、一層努力しんした」
自分が吉原で生きていくために、これは必要な事なのだと思えば、どんな事でも耐えることが出来んした。
……そうして努力を重ねた結果、いつしかわっちは花魁という地位を手に入れ…夜の世界を生きぬく力を手に入れたのじゃ。
ーーーーーーーーーーーーー
「……これ文花。折角止まったのにまた泣く奴がおるか…」
わっちの膝に頭を伏せてぐずぐずとすすり泣く文花の頭を撫でても、文花に泣き止む様子はなく、逆に今度は嗚咽を漏らしながら本格的に泣き出してしまった。
「まったく、この話はもう何百年も前の話でありんすよ？今じゃ記憶も所々曖昧でありんすし、これと言った怨みもありんせん。…全ては過去の事なのでありんすよ」
そう励ませば、ようやく文花は顔を上げてくれた。…まだ目に涙をためてはいんしたが、泣き止んでくれたことに、少しだけ安堵した。
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吹雪@元百鬼蘭.° - おおっ!後編ですか…!!楽しみに待ってます!(^^* (2015年10月28日 0時) (
レス) id: 4ea06a141b (このIDを非表示/違反報告)
ドS王子LOVE - 夢主かっこいいです！オロチとか超かわいい！更新頑張ってくださいね！ (2015年10月11日 12時) (レス) id: 52660d2b3d (このIDを非表示/違反報告)
加州 - 最新頑張ってください...楽しみにしてます(にっこり (2015年10月9日 23時) (レス) id: 000de04641 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼蘭.° - おぉ！一人称がここの夢主さんと同じだ！！嬉しいぞ！(^^* (2015年10月6日 22時) (レス) id: 4ea06a141b (このIDを非表示/違反報告)
くぅさん - 犬神は...犬神はは一体黒狐のなんなんだｧｧ！！更新楽しみに待っています！ (2015年10月4日 2時) (レス) id: 09a2c937ed (このIDを非表示/違反報告)
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