六十の巻 わっちと月見酒 ページ15
【土蜘蛛の屋敷】
土蜘蛛「…ふむ、やはりその着物はお主によく似合うな。」
「よろしいのでありんすか？こんな上等な着物をわっちなどが貰ってしまいんして…」
若紫色の生地に白い美しい蝶と蜘蛛の巣がデザインされた着物は一目見ただけでも高級なものだと分かる。
無償で貰う事に心苦しく思うAとは裏腹に、土蜘蛛は笑顔であった。
土蜘蛛「気にするでない。元祖軍の妖怪達が貢ぎ物として寄越したのだが、手違いで女物も含まれていてどうしようか悩んでいた所なのだ」
「しかし……」
土蜘蛛「それに今宵お主を酒の相手として呼び出したのは吾輩なのだ。これ位の礼を受け取っても、バチは当たるまい。」
「…ではお言葉に甘えて、有難く頂戴いたしんすね？」
土蜘蛛「そうしてくれ。…では酒でも飲もうではないか。遠慮はいらぬ、存分に飲むがいい」
「ではわっちがお酌させていただきんす。」
土蜘蛛「む、すまぬな」
猪口に酒を注げば、土蜘蛛は豪快にそれを飲み干し、ふぅ、と感嘆の溜息を零した。
土蜘蛛「やはりお主を呼んで良かった。噂の黒狐に酌して貰えるなど、夢にも思うておらんかったわ」
「わっちの噂でありんすか？それは大層悪い噂なのでありんしょうね…」
土蜘蛛「何を申すか、どれもお主の美しさを讃えた物ばかりだ。噂など尾ひれがついて信用に欠けるものだと思っていたが、お主のような噂通りのおなごに会うのは初めてであったぞ」
「煽てるのがお上手でありんすね？わっちなどそんな大した女ではございんせんのに…」
土蜘蛛「…お主は少し自分を知らなさ過ぎる。もっと自分を知っておくべきだ」
「似たような事を大ガマにも言われんした」
土蜘蛛「ピク))大ガマ…？お主、何故大ガマの事を呼び捨てるのだ？」
「先日大ガマの買い物に付き合わされて、その時に呼び捨てるように言われんしたので…」
土蜘蛛「…………」
「？土蜘蛛様？一体どういたし『様はいらぬ』え…？」
土蜘蛛「あやつに先を越されるなど不本意極まりないが、今日から様付けはいらぬ。あと敬語も抜かせ。よいな？」
「？分かりんした…。」
土蜘蛛「それともう一つ…」((ドサッ。
「！土蜘蛛…？」
土蜘蛛「少し酔いが回ってしまってな…お主の膝を貸してくれ。」
「！ふふ…ええどうぞ」
少しだけ顔の赤い土蜘蛛。
果たしてそれは酒のせいか、それとも…？
＊蜘蛛の巣柄の着物は「貴方を絡め取る」という意味があるそうです。
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吹雪@元百鬼蘭.° - おおっ!後編ですか…!!楽しみに待ってます!(^^* (2015年10月28日 0時) (
レス) id: 4ea06a141b (このIDを非表示/違反報告)
ドS王子LOVE - 夢主かっこいいです！オロチとか超かわいい！更新頑張ってくださいね！ (2015年10月11日 12時) (レス) id: 52660d2b3d (このIDを非表示/違反報告)
加州 - 最新頑張ってください...楽しみにしてます(にっこり (2015年10月9日 23時) (レス) id: 000de04641 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼蘭.° - おぉ！一人称がここの夢主さんと同じだ！！嬉しいぞ！(^^* (2015年10月6日 22時) (レス) id: 4ea06a141b (このIDを非表示/違反報告)
くぅさん - 犬神は...犬神はは一体黒狐のなんなんだｧｧ！！更新楽しみに待っています！ (2015年10月4日 2時) (レス) id: 09a2c937ed (このIDを非表示/違反報告)
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