第63訓 昔の俺は… ページ15
勉強はコツさえ分かっちまえばテストで満点は当たり前。スポーツもちょっとやればすぐに上達して、誰も相手にならなくなる。
俺の人生において、『障害』という言葉は無縁だった。
周りからの羨望と嫉妬の眼差しは半端じゃなかったが、俺はそんなもんどうでも良かったし、むしろ俺からしたら自分より劣る連中の方が、よっぽど羨ましくてならなかった。
だってそうだろ?何もかも上手くいく人生なんて、退屈以外の何者でもない。何かに熱心に打ち込むことも、努力することもなく全てを手にできる。
……ハッキリ言って、俺の人生は生きる意味も価値もない、バグだらけのイージーゲームのようなものだった。
だが中学に入り、初めてサッカーを始めた時…俺の人生は全てひっくり返った。
そこのサッカー部のキャプテン…昨日来てたガチムキな男がいただろ?俺はあいつにサッカーでボロ負けしたんだ。
圧倒的な実力差だった。俺はそこで、初めて悔しいという感情が心の中で芽生え、そして同時に、嬉しさもこみ上げてきたんだ。
ようやく、自分の欲しかった物が手に入ったんだ……ってな。
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龍崎「今の俺があるのは、サッカーとの出会いがあったからだ。もしあの時、サッカーに出会えなかったら…俺は本当にどうにかなってたと思う。」
雅野「…その話と俺に何の関係があるんだ?」
龍崎「まあ要するによ、ぶち当たる壁もなかった俺に比べて、ぶち当たった壁を超えるために努力するお前の方が、よっぽど恵まれてて羨ましかったってことだよ」
雅野「!!」
龍崎「“人を真に幸福にするものは、何か我を忘れて取り組める事柄を持つことである”…誰の名言かは忘れたけど、本当にその通りだと思うんだ。あの頃より…俺は今の方がよっぽど幸せだしよ」
そう言いながら雅野に笑いかける龍崎の表情は……とても幸せそうだった。
龍崎「明日の試合、仕事があるから見に行けねーけど、雅野なら大丈夫だ。俺の特訓についてこれたし、今日まで死ぬ程努力したんだ。…なんも不安がる必要はねえよ」
雅野「……ふん、言われなくても分かってるさ」
先ほどの自信なさ気な声音から一変して、生意気な口調に戻った雅野の表情は、どこか自信にあふれていたことを、龍崎は静かに感じ取ったのだった……。
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紅雅華咲 - 凄く面白かったです!面白すぎて、何回も読みなおしちゃうくらいハマりました! (2018年8月3日 23時) (レス) id: d91252218e (このIDを非表示/違反報告)
ジャンガラ - これマジサイコーwww ホントに笑いが止まらないwww (2015年5月15日 18時) (レス) id: 938b3adc10 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーゆ - これ、すっごくおもしろいです!! (2015年3月25日 12時) (レス) id: 938b3adc10 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒@精神的にないわ(プロフ) - あの、パート1から気になってたんですけど猿飛は? (2014年12月3日 20時) (レス) id: 9cc8c1c344 (このIDを非表示/違反報告)
狩屋渚(プロフ) - 珍回答ワロタwwwwwwwwww (2014年11月24日 0時) (レス) id: 00c49cb079 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒 | 作成日時:2014年8月27日 23時