ポートマフィアの白衣の悪魔〜黒の時代〜

白衣の悪魔 五 ページ38

芥「Aさん？」

そう言われて振り返ると

『芥川くん……か』

芥「傘は？」

『あはは……忘れて来てしまいました』

そういえば傘を差し出される

芥「使ってください」

『いえ……これくらい』

芥「……先日は、僕が知らなかったから生意気な事を言ってすみません」

先日……？

あ、織田作が毒で倒れた時か

『大丈夫だよ。あの時はまだ正式に補佐官を受理してはいなかったからね』

そういえば彼はそうですかと言って頷く

沈黙が走る

『こんな雨の中、どうしたんだい』

芥「太宰さんを……探しに」

そうか……

『……そうなんですね』

今頃太宰くんは、隠れてるのだろう

確か、政府の中で人に犯罪を消す組織があると聞いた事がある

どうでもいいか

『君も忘れられないんだね』

芥「……はい」

『……』

芥「……そろそろ時間なので」

『あ、傘……』

芥「翌日で構いません」

そう言って芥川くんは走っていった

中「おい！A！！」

『っ』

中也くんが傘を持って走って来た

中「……その、悪かった。一回帰ろうぜ」

そう言われて頷く

謝れない

怖くて顔も見れない

歩こうとすると手を握られる

中「俺も姐さんも気にしてねェから。いくぞ」

『……うん』

その手が暖かくて、織田作さんをまた思い浮かべて揶揄ってくる二人を思い浮かべてまた涙が出た

まだ、僕は弱いままだ

忘れたいのに……

中「忘れたいとか思わなくていいんだよ」

そう言われて前を歩く中也くんの後ろ姿を見る

中「忘れるんじゃねぇ。それも一経験と思って心の中に残しとけ。人間生きてたら色々あるだろ」

『……中也くんが、人間のこと言っても、説得力ない』

中「うるさい」

『……でも、僕は……』

言葉が詰まる

判らない

この気持ちをなんて言うのか判らない

伝えられないまま僕は黙ってついて行った

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