残り香【S.K】 (ページ2)

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夏の#2 ページ2

「ただいま～」

「おかえり～」

同じテンションで返事が返ってきたことに若干ほっとした。

いや、ほっとしてる場合じゃないんだけど。

「・・・なにしてんの？」

リビングまで足を引きずっていくと、Aが本棚の前で伸びたり縮んだりしてる。

「どの本がおもしろいかな～と思って」

「えぇ？」

上の方を頑張って見ようとつま先立ちしてる横で、手を伸ばす。

「これなんかおもしろいよ。人間の底の底にある狂気っていうか、結局、人のサガってやつはなんなんだろうって・・・」

「ふーん」

パラパラとめくっているのを、口を尖らせたAがのぞき込む。

「あ、ごはん食べたの？」

なんだよ、興味ねーのかよ。

「食った。弁当出たし。つか、何時だと思ってんの？」

とっくに日付は変わって１時間半を過ぎようとしてる。もうすぐ草木も眠る丑三つ時よ？

「おつかれさま。お風呂入って早く寝なよ。

ここ、すごいことになってる」

「あー、それ今日メイクさんにも言われた」

『加藤さん、クマすごいですねー。目が大きいからですかね？』って、知らねーわ。

「目が大きいのも考えものねぇ」

「だから知るかって！・・・もういい、風呂入ってくる」

「うん。いってらっしゃーい」

Aはまた本棚で別の本を物色し始めた。