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悪い女 ページ22
「シゲアキ」
「ん」
友達がいるからって抵抗するかと思ったけど、すんなりとシゲアキは唇を重ねた。
さっきまで飲んでいたアルコールと、香水と、シゲアキの匂い。鼻腔いっぱいに吸い込んだら、脳がじんと甘く痺れた。
軽く合わせた彼の唇がほんの少し開く。舌をするりと差し込めば、シゲアキのものと絡まりあう。
ドサリ、とバッグが床に落っこちた。
彼の手が背中に回る。
ぎゅっと抱きしめて、キスが濃さを増す。
体を押し付けあうと、火照った皮膚が炙られるように熱くなって・・・
「んっ、け、けほっ」
・・・んもう。
一瞬だけ強い力で抱きしめられて、私の下唇に柔く噛み付いていたシゲアキがゆっくりと顔を離した。
「ごめん、行くわ」
「うん。帰ってきたら連絡して」
「わかった」
じっと彼の目を覗き込む。
もう一度抱きしめて、ようやく２人あいだに隙間ができた。
「じゃ、じゃあね！Aさん、またね！」
「さよなら、小山さん。シゲアキ、おやすみなさい。気をつけて帰って」
エレベーターのドアが閉まるまで手を振って、上から通りを覗くと、『オレのこと、完全に忘れてたでしょ？！』と叫ぶ小山さんの声が聞こえた。
出てきた２人の後頭部が見える。黒い方がこっちを仰ぎ見た。
笑顔を浮かべたシゲアキに手を振ると、照れたように首をすくめて、来た時のように片手を挙げた。
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作者名：Niina* | 作成日時：2023年7月22日 17時
