12.フレーバーも変わるのだから ページ12
緊張の縄で縛られている張り裂けそうな心臓が小さな針で刺されたようで、胸の鼓動がゆっくりと萎んでいく。
｢これ、今食べていい？｣
｢どうぞどうぞ！｣
袋を開いて赤い粒をひとつ摘む。
イチゴの形を象った粒を口に入れると、舌には甘さが広がった。
｢…イチゴだ｣
｢そのグミ、美味しいよね｣
手に取った小さな赤い粒はちゃんとイチゴの味がした。
昔とはフレーバーが変わったのか。ここ数年食べてなかったから、知らなかった。
｢ハンビンくん、ありがとう。私、このお菓子大好きだったの｣
練習が始まる少し前にお互いにお菓子をひとつ持ち寄って、ピアノ教室の隅で先生に見つからないように食べたお菓子。
ピアノがある教室内では飲食厳禁だったから、いつも隠れながら甘いお菓子を一つだけ口に入れていた。
昔は舌に残る甘さが、難しい譜面をなぞるための慰めになってくれていたんだ。
｢…Aさん｣
｢？｣
｢Aさんって笑うと雰囲気、柔らかくなるんだね｣
彼の黒い瞳が弓なりに細められる。
＿＿＿ギリギリ。
一瞬だけ忘れていた緊張が一気に蘇り心臓を、喉を、キツく締められる感覚がした。
｢そんなに好きだったなら、もっといっぱい持ってきておけば良かったな｣
｢…同じやつがあるんだ｣
｢うん。あと五つくらい｣
流石にそこまではいらない。
いらないと何度も首を振れば、彼は声を出して笑う。
｢今日、ここに来て良かった。Aさんのこと、ふたつ知れた｣
｢ふたつ？｣
｢グミが好きなことと笑うと少し幼くなること！｣
…彼に対し様々な感情を向ける女子の気持ちが分かる。
｢…罪作りな人間だ｣
｢え？｣
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ぴ(プロフ) - 展開がまだ分からないんですけどワクワクしてます〜！更新停止中？みたいなのでしばらく更新ないのかもしれないのですが、気長に待ってます😌😌😌 (7月1日 0時) (
レス) @page14 id: d5c63dc535 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナナシノゴンベ | 作成日時：2023年3月29日 1時
