結論、これは恋ではない。 (ページ14)

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14.あくまで下調べのためページ14

｢それがいい！うん、それがいいよ！A、火曜日と木曜日は塾ないって前に言ってたし、大丈夫だよね？｣
｢…んーっと｣

今日は昨日の夜思いついた作戦の下調べをしたかったのだ。

目だけを動かして、教室内にとある人物たちの姿を探す。
彼らの席は確か窓際の後列だ。太陽がよく当たる場所で何だか眠くなってしまいそうな席。

長身の彼の提案に乗るにしても、せめて彼らと彼…ハンビンくんの距離感だけでも確認しないと。

｢…｣
｢A？｣
｢先輩？｣

い、いない！
本当に少ししか目を離してなかったのに！

｢ご、ごめん。え、あ…ま、また明日！｣
｢え、えぇ？A！｣

イナの情けない声を背中に私は急いでリュックを背負って教室を出る。

決めたことは直ぐに実行しないとどんどんと後回しになっていく。
私は自分に甘いから、自分のことは自分で律しないと誰も助けてくれないのだ。

階段を駆け下りて、昇降口で靴を履き替える。
外に出ると、少し先に彼らはいた。

白いパーカーとふわりとした茶髪の男の子と
スラリとした長い脚を持つスタイル抜群の女の子。

そう。彼らは例の一件『学校の人気者の秘密失恋事件』の当事者である。

率直に言えば彼の”幼馴染”たち。

ハンビンくんが私とのぼっち飯生活を送ることになってしまった原因でもあり、ぼっち飯生活から脱するための希望の光でもあった。

校門を出て、しばらく歩き学校から離れた場所。
そこで私が取り出したのは伊達メガネとマスクだ。

｢…よし｣

これはあくまで情報収集を行うための行為。

この行為に一切の下心は無いし、変に利用したり拡散したりする気もない。

＿＿＿＿しかし、私が今から行うのはストーキングだ。

絶対にバレてはいけない。
特にあの二人とハンビンくんだけには。

ゴクリ。
喉に詰まった唾を飲み込む。

さぁ、一歩踏み出そうキム・A。
影の薄いアナタならこれぐらいのことちょちょいのちょいよ。

｢＿＿＿＿Aさん｣
｢！？｣

ぽんと優しく置かれた手が電流を帯びていたようだった。
反射的に体が後退り、その人物から距離を取る。

そこにいた人は真っ黒な瞳を丸くして、小さく口をポカンと空けていた。

｢…｣
｢…｣

バレた。
それも一番知られたくなかった相手に。速攻に。

視線を何度が泳がせた後、彼はあーっと困った声色で話し出す。

｢えーっと。取り敢えず、忘れ物だよ｣
｢…ありがとう、ございます｣