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「ありがとう、終兄さん」
そう伝えると、彼は何のことだ?と言いたげに首を傾げた。
「私を慰めてくれたんでしょ?誤魔化してもダメ。分かるよ、私には」
言葉を聞き終わった終兄さんはギョッと目を見開く。そしてバツが悪そうにして、まじまじと私の目を見つめる。図星の様だ。
何故分かった?と彼の目が問いかけてくる。そんなの簡単よ、だっていつもしてくれるんだもの。流石にもう気づいて欲しい。
私がそう無言で訴えると、それを察したのかはいまいち分からないけど、終兄さんの目が悲しそうなものに変わる。そしてもう一度私の頭を優しく撫でた。
同情の様な感情が、彼の手から伝わってくる。他の人なら不快に感じるけど、彼からのものなら苛立たない、寧ろ心地良く思う。
「ふふ、ありがとう」
私も終兄さんの頭を撫でる。二人でお互いの頭をぐしゃぐしゃぐしゃ。おそらく変な光景なんだろうな。
それでもいいの。最近はこの時間が一番好きだから。
「ん……ありがとう、もう大丈夫だよ。終兄さん。終兄さんのおかげで元気出た」
今日も頑張れそう。
そう言うと終兄さんはまた目を緩やかに細めた。私を見つめる瞳はとても穏やかだ。
終兄さんはもう一度ゆっくりと私の頭を撫でると、すっと離れた。そして、頑張れという様にぽんと背中を押してくれた。何故だろう、彼にこうされるといつも背筋が伸びた気分になる。
私はそれに応えたくて、彼に手を振って見廻りへと駆け出した。
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元気良く仕事へ向かったのは良いものの。
すぐに私の心は折られてしまって。
「お妙さァァァん!!今日こそ俺と、結婚してくださァァァァい!!!!」
……あーあ、目撃してしまった。これだから見廻りは嫌なんだよ。
「……わざと見せましたか?沖田さん」
おかしいと思ったんだよ、一緒に見廻り行きやしょうだなんて。
私が問いかけると童顔の美少年はニヤリと顔を歪ませた。
「まっさかァ。そんな意地の悪ゥ〜い事、これっぽっちも思ってないでさァ」
「嘘ばっかり」
ハァ、と今日何回目かの溜め息をつく。沖田さんはそんな私を見てけらけらと笑い出した。くそ、ムカつく。
「相変わらずAは男の趣味が悪いでさァ。近藤さんよりも俺に惚れた方がいい思いさせてあげられるのにねィ」
「あはは、冗談はおやめになって」
「冗談、と思えますかィ?」
まだアレを見て、と沖田さんが囁く。
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瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» 大変申し訳ございません!(滝汗)しかしその様に言ってもらえて大変ありがたいです!寧ろ私の利己的な作品を見てくださっているので、感謝の言葉しか出てきません。今後は誤解のない様に何らかの対策を講じるので今後も閲覧よろしくお願いします! (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» コメントありがとうございます!えーっと、作品の冒頭の追記欄に書いてある通り、基本的に物語の終わりにはENDを付けております。したがって『忠誠心』という物語はまだ未完の状態でありまだ続き物として扱っていたのですが……分かりづらかったですよね。(汗) (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
エト - 高杉の忠誠心の作品は、読んでいてとてもわくわくしながら観ました!出来ればあの後どうなったのか続編の作品が観たい!我が儘だと自覚していますか。お願いします (2017年9月8日 18時) (レス) id: 32fc95954c (このIDを非表示/違反報告)
後輩2(プロフ) - アルハ*平日低浮上*さん» コメントありがとうございます!まさか書いた直後にコメントをもらえると思っていなかったのですごく嬉しいです!むしろまたコメントしてくださってありがとうございます(五体投地) (2017年8月11日 8時) (レス) id: c37a9d99ce (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - 何度もすみません、高杉ドストライクです。ありがとうございます(土下座) (2017年8月11日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃鶲 | 作成日時:2017年1月24日 1時