あい・らぶ・ゆー!【神威】 ページ42
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「やぁA、元気かい?」
「げ……」
数ヶ月前、家の前でお腹を空かせて倒れていた彼。それを見た私は放っておく事が出来ず、なんとか家の中まで運んでご飯を出した所、どうやら懐かれてしまったらしい。それ以来彼は頻繁に私の元へやって来る。
また来たのかこの子は。いい加減懲りない奴め。
「はは、嫌だなぁ。せっかく俺が会いに来たのに。あ、もしかしてツンデレってやつ?」
「頼んだ覚えはないんだけど……そして別にツンもデレもしてないんだけど……」
「大丈夫、俺はどんなAでも愛してるよ」
「話聞いてた?そしてなんでそんなむちゃくちゃ恥ずかしい事言えるの?」
「なんでって、愛してるから」
なんでそんな事を聞くの?と彼が私を覗き込む。柔らかな赤色の綺麗な髪は丁寧に三つ編みでまとめられているけど、頭のてっぺんにぴょこんと立つアホ毛とくりくりとした青くて大きな目が彼の幼い部分を引き立てる。なんでなんで?と子どもの様な澄んだ瞳の彼に思わず私はうっ、と怯んだ。
「あのね、言う方はいいかもしれないけど、言われるこっちが恥ずかしいんですよ」
「だって本当の事だし。あっ、そうだ!今日はいいもの持ってきたんだー」
ごそごそと懐から何かを取り出そうとしている神威君。ちょっと待って、まだ話の途中なんですけど。
「はい、これあげる」
遮る間もなく彼が私に差し出したのは、高級そうな装飾が散りばめられた髪飾り。それを見た私は、思わず溜め息が零れる。
「あり?お気に召さなかった?」
「そういう訳じゃないんだけどね……神威君、一応聞くけどこれどうやって手に入れたの?」
「盗んできた」
悪びれもなくにこやかに笑みを浮かべる神威君。私を見下げる彼はどこか誇らしげで、褒めて褒めて、と主人に尻尾を振る子犬に見えて、なんだかもう怒鳴る気力も失せていく。
「神威君……これはいらない」
「えぇー?どうして?きっと君も気に入ると思ったのに」
「あのね、神威君。いくら綺麗で可愛くても盗んだ物は受け取れないよ。そんなもの貰ってもちっとも嬉しくないの」
分かる?と出来るだけ優しく問いかける。
「今まで何回も私になにかくれようとしたのはもちろんありがたいよ。でも、それは他人の物でしょう?そういうのはちょっと……ね?」
「うーん、人間って分からないなぁ」
神威君は不満気に頬を膨らませて、髪飾りを手の中で転がして、じっと見つめてそう呟いた。
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瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» 大変申し訳ございません!(滝汗)しかしその様に言ってもらえて大変ありがたいです!寧ろ私の利己的な作品を見てくださっているので、感謝の言葉しか出てきません。今後は誤解のない様に何らかの対策を講じるので今後も閲覧よろしくお願いします! (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» コメントありがとうございます!えーっと、作品の冒頭の追記欄に書いてある通り、基本的に物語の終わりにはENDを付けております。したがって『忠誠心』という物語はまだ未完の状態でありまだ続き物として扱っていたのですが……分かりづらかったですよね。(汗) (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
エト - 高杉の忠誠心の作品は、読んでいてとてもわくわくしながら観ました!出来ればあの後どうなったのか続編の作品が観たい!我が儘だと自覚していますか。お願いします (2017年9月8日 18時) (レス) id: 32fc95954c (このIDを非表示/違反報告)
後輩2(プロフ) - アルハ*平日低浮上*さん» コメントありがとうございます!まさか書いた直後にコメントをもらえると思っていなかったのですごく嬉しいです!むしろまたコメントしてくださってありがとうございます(五体投地) (2017年8月11日 8時) (レス) id: c37a9d99ce (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - 何度もすみません、高杉ドストライクです。ありがとうございます(土下座) (2017年8月11日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃鶲 | 作成日時:2017年1月24日 1時