了 ページ36
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雨は、好きじゃないけど、嫌いでもない。
雨の日は濡れるから好きじゃない。
でも、雨は私の醜いものを洗い流してくれる気がしたから、嫌いでもなかった。
雨が、もっとふればいい。沢山ふって、私が生きている事がうやむやになればいい。
「……A」
虚ろな気分で見上げた高杉は、雨に打たれて独特の色気を滲ませていた。
元々男にしては妖艶な雰囲気はあったけど、あぁ、これが水も滴る何とやら、とでも言う奴なのだろうか。まぁ、どうでもいいけど。
そんなくだらない事をぼんやりと考えてると、────ふわりと、高杉が私の体を包む様に抱きしめた。
「……?」
よく、意味が分からない。抱きしめた意味が、抱きしめられた意味が。
分からない。雨に濡れた高杉の体は冷たい筈なのに、高杉を、暖かいと感じてしまう意味が。
高杉は黙ったまま私の後頭部にそっと手を添えて、優しく撫でてくれた。血や汗に塗れた髪はきっと梳くのも難しいはずなのに、高杉はいとも容易く私の髪に指を通らせて、そのまま髪に口付けた。ますます意味が分からない。
正直、やめて欲しいと思った。高杉が、私の醜悪に溶け込んでしまいそうで、私の心の一部になってしまいそうで、怖かった。
お願い、やめてやめてやめて。高杉まで、汚くならないで。私の中に、入らないで。
「たかすぎぃ……」
「何だ」
────でも、そんな事コイツには絶対に言わないって決めてるから、私は私を濁らせて、また醜い、悪いものになっていく。
「……おなかすいたぁ」
「…………帰るかァ」
高杉は私を抱きしめたまま、彼らしくない、優しい笑みを浮かべた。
「たかすぎ、おんぶ」
「あァ?テメェで歩けや」
「たかすぎがぎゅっとしたせいで歩けない」
「チッ!」
「さっさとしろ」と言って、高杉は背中を向けて屈んだ。私がのそのそと高杉の背中に体重を預けると、高杉はスっと立ち上がり、私を抱えてスタスタと足早に歩き始めた。
高杉の背中はやっぱり暖かくて、なんだか心地よかった。
「……たかすぎは、あったかいなぁ…………」
「ンだよ、気持ち悪ィな」
高杉の背中に顔を埋めて小さく呟いた言葉は、やはり高杉に届いていて、高杉は彼らしい悪態をついた。
「お前ェはもっとあったけェんだよ……」
高杉もぼそりとそう呟いた。高杉の顔は、見えなかった。
(貴方は美しいままでいい。どうかそのまま、汚くならないで下さい)
END
ごめん、やっぱりゆるさないで。【沖田総悟】→←醜悪【高杉晋助】
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瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» 大変申し訳ございません!(滝汗)しかしその様に言ってもらえて大変ありがたいです!寧ろ私の利己的な作品を見てくださっているので、感謝の言葉しか出てきません。今後は誤解のない様に何らかの対策を講じるので今後も閲覧よろしくお願いします! (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» コメントありがとうございます!えーっと、作品の冒頭の追記欄に書いてある通り、基本的に物語の終わりにはENDを付けております。したがって『忠誠心』という物語はまだ未完の状態でありまだ続き物として扱っていたのですが……分かりづらかったですよね。(汗) (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
エト - 高杉の忠誠心の作品は、読んでいてとてもわくわくしながら観ました!出来ればあの後どうなったのか続編の作品が観たい!我が儘だと自覚していますか。お願いします (2017年9月8日 18時) (レス) id: 32fc95954c (このIDを非表示/違反報告)
後輩2(プロフ) - アルハ*平日低浮上*さん» コメントありがとうございます!まさか書いた直後にコメントをもらえると思っていなかったのですごく嬉しいです!むしろまたコメントしてくださってありがとうございます(五体投地) (2017年8月11日 8時) (レス) id: c37a9d99ce (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - 何度もすみません、高杉ドストライクです。ありがとうございます(土下座) (2017年8月11日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃鶲 | 作成日時:2017年1月24日 1時