了 ページ33
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俺達は、いつだって二人で一つ。
それが当たり前でずっと続くと思っていた。続くべきだと思っていた。
でも、そうじゃなかった。俺は一人分の価値でお前も一人分の価値。それ以下でもそれ以上の存在でもない、ただの人間だった。
最初に気付いたのはお前。それを認めたのもお前。俺は気付く事が出来なかったし認める事も出来なかった。
だって、だって、
俺達は二人で一つで、アイツは俺がいれば大丈夫……
「そーちゃん、違うの」
やめろやめろやめろ、言わないでくれ。どうか、このまま────
「ダメなんだ、君がいるから」
なんで、そんな事言うんだよ。お前はいつだって、俺の隣にいたじゃねェか。
「私がそーちゃんの隣にいると、そーちゃんも、私も、ダメになっちゃう」
そう泣きながら、笑いながら言ったAは、今まで見てきた中で一番綺麗で、一番残酷だった。
今更だけど、気付いた事がある。
出来損ないはAじゃなくて、俺の方。片割れがいないと駄目なのは俺だけで、Aに恋をしてるのも俺だけ。俺はAさえいればよかった、Aだけいればよかった。そのAが今、俺から離れようとしている。
「今までありがとう、そーちゃん」
Aが遠くなっていく。俺の届かない所へ行ってしまう。
────それなのに、俺は一歩も動けないままで。
どうしたんだ、早く連れ戻せ。あの細い腕を掴んで、華奢な体を抱き締めろ。そして薄紅色の唇を貪って、アイツの首筋に俺の証を刻め。
しかしいくら頭が命令しても、やはり体は動かないまま、俺はしばらくそこに突っ立っていた。
────あぁ、やっぱり俺達は兄妹なのか。
ぼんやりと当たり前の事を考える。そんなモンは肩書きだけだと思っていたが、どうやらそうでもねェらしい。
「────君がいないと、駄目なんだ……」
そう呟いたのは、もちろん俺。その相手はもちろんアイツ。けれども、もうどうする事も出来ない。
なぁ、頼むから戻ってきてくれよ。出来損ないの俺ァ、お前がいねェと駄目なんだ。どうか、俺の所まで堕ちてくれ。
虚しくも俺の願いは空に吸い込まれて消えてゆく。仰いだ空は深い青に侵蝕されていて、まるでAに染まってしまった俺みたいだと思った。
俺の中を流れる血液は、唯一、俺達を深く繋ぎ、俺の邪魔をする。愛おしくて、忌々しい。
────そーちゃん。
振り向けば、君はいない。
END
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瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» 大変申し訳ございません!(滝汗)しかしその様に言ってもらえて大変ありがたいです!寧ろ私の利己的な作品を見てくださっているので、感謝の言葉しか出てきません。今後は誤解のない様に何らかの対策を講じるので今後も閲覧よろしくお願いします! (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» コメントありがとうございます!えーっと、作品の冒頭の追記欄に書いてある通り、基本的に物語の終わりにはENDを付けております。したがって『忠誠心』という物語はまだ未完の状態でありまだ続き物として扱っていたのですが……分かりづらかったですよね。(汗) (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
エト - 高杉の忠誠心の作品は、読んでいてとてもわくわくしながら観ました!出来ればあの後どうなったのか続編の作品が観たい!我が儘だと自覚していますか。お願いします (2017年9月8日 18時) (レス) id: 32fc95954c (このIDを非表示/違反報告)
後輩2(プロフ) - アルハ*平日低浮上*さん» コメントありがとうございます!まさか書いた直後にコメントをもらえると思っていなかったのですごく嬉しいです!むしろまたコメントしてくださってありがとうございます(五体投地) (2017年8月11日 8時) (レス) id: c37a9d99ce (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - 何度もすみません、高杉ドストライクです。ありがとうございます(土下座) (2017年8月11日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃鶲 | 作成日時:2017年1月24日 1時