了 ページ19
・
あれ、ここはどこだろう。
見渡す限り、白、白、白。景色どころか境界線すら見当たらない。
何も無い世界に、私はたったいっぴき。
……
最高じゃない?
人目を気にしなくてもいい、嫌いな奴を見なくてもいい、ウザいハゲオヤジに命令されなくてもいい、醜い争いをしなくてもいい!!
「あはははっ、さいこー。
あは、ははははー、あー……
……はは、は」
何よりも望んだ世界は、何よりも残酷な世界だった。
「あーあ、虚しい」
か細い声は空に浮かんでいく煙の様に消えていく。悲しくても、辛くても、涙が出てこない。今まで邪魔なものだと思ってたんだけど、なぁ。
「……もうやだ、消えたい」
「ヘェ、俺もいるのに?」
え、え?
「だ、ん、ちょ……?」
いきなり目の前に現れた団長はいつもみたいにニカッと不敵に笑い、私をぎゅっと抱きしめて、こう言った。
「こんにちは、君を迎えに参りました!」
・
「…………ん」
夢、か。
体調が悪い時は、どうも嫌な夢ばかり見てしまう。(最も、今のは最後は結構いい感じだった)
……いい所だったのに。
目を開けたら、なんて事無い無機質な天井。
うわぁ、汗ベタベタ、喉カラカラ。気持ち悪い。そして体がだるい、重い。否が応でも生きている事を思い知らされる。
「……さいあく」
「え、嫌なの?」
「え、」
団長の声が耳元で聞こえる。
恐る恐る声の聞こえる方向に顔を向けると、視界いっぱいに団長の顔が広がって、て、て。
「団長!?な、何を……!!」
「好きな女の布団に入って好きな女を抱きしめている」
「今すぐ離れて下さい!」
「やだ」
「……汗の臭い、移りますよ」
「Aならいい」
団長は私の首元に顔を埋めてより一層強くしがみつく。なぜだろう、どこか様子がおかしい。
「……団長、あの」
「Aは」
団長が私の言葉を遮る。
「……俺より先に、死んじゃ駄目だよ」
微かに、微かに震える手は酷く熱を帯びていて、やけどするかと思った。
「……団長」
それ程酷く魘されていたのだろうか?
そんな事も少し考えたけど、団長の存在を感じていたらどうでも良いとさえ思ってしまった。
なぜなら、なぜなら。
貴方に必要とされてしまったから
(はいっ、召し上がれ!)
(……いただきます)
END
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瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» 大変申し訳ございません!(滝汗)しかしその様に言ってもらえて大変ありがたいです!寧ろ私の利己的な作品を見てくださっているので、感謝の言葉しか出てきません。今後は誤解のない様に何らかの対策を講じるので今後も閲覧よろしくお願いします! (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃鶲(プロフ) - エトさん» コメントありがとうございます!えーっと、作品の冒頭の追記欄に書いてある通り、基本的に物語の終わりにはENDを付けております。したがって『忠誠心』という物語はまだ未完の状態でありまだ続き物として扱っていたのですが……分かりづらかったですよね。(汗) (2017年9月9日 22時) (レス) id: a2c8773b35 (このIDを非表示/違反報告)
エト - 高杉の忠誠心の作品は、読んでいてとてもわくわくしながら観ました!出来ればあの後どうなったのか続編の作品が観たい!我が儘だと自覚していますか。お願いします (2017年9月8日 18時) (レス) id: 32fc95954c (このIDを非表示/違反報告)
後輩2(プロフ) - アルハ*平日低浮上*さん» コメントありがとうございます!まさか書いた直後にコメントをもらえると思っていなかったのですごく嬉しいです!むしろまたコメントしてくださってありがとうございます(五体投地) (2017年8月11日 8時) (レス) id: c37a9d99ce (このIDを非表示/違反報告)
アルハ*平日低浮上*(プロフ) - 何度もすみません、高杉ドストライクです。ありがとうございます(土下座) (2017年8月11日 0時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃鶲 | 作成日時:2017年1月24日 1時