楽園の番人。 ページ11
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修也くんはいつも堂々としていて強くて真っ直ぐでかっこいい。世の中の男子たちが一度は憧れる存在。しかし、そんな彼もわたしの前では気が抜けるのか、この上なく可愛らしい行動に出ることがある。このような修也くんを目にできるのは妻の特権、というものだろう。それを自慢するためだけに、今日は筆をとることにした。暫しの惚気話に付き合って欲しい。
その日仕事から帰ってきた修也くんは、珍しく会話をする気力もないくらいに疲れ果てていた。就寝の支度までは何とか成し遂げたものの、リビングから寝室のベッドまで移動しようという最後の最後で力尽きる。
ソファーに寝転がって動かなくなった修也くんの身体を揺らして起こそうとするが、無駄なあがきであった。わたしがリビングで寝落ちたら、どんなときも修也くんが運んでくれるのに。貧弱なわたしでは彼を運ぶことができない。
｢修也くん、後ちょっと頑張って〜｣
春が来たとはいえ、夜はまだ肌寒さが残っている。修也くんは案外風邪をひきやすいので、何としても暖かいベッドで寝かせなければ。
｢ちゃんとベッドまで行けたらご褒美あげるから〜｣
｢……いく｣
ご褒美につられた。かわいい。随分と重そうに身を起こす修也くんの手をきゅっと握って立ち上がった。こういう時の修也くんは全くと言っていいほど前を見ておらず、壁に頭をぶつけたりする。だからわたしが寝室まで先導するのだ。手を引かれるがまま着いてくるさまも可愛らしくてきゅんとした。いつも落ち着きがあって優しい修也くんに甘やかされてばかりなので、わたしも彼を甘やかしたい。眠気のフィーバータイムはそのチャンスだ。
｢修也くん、今日もお仕事大変だった？｣
｢ん｣
｢いつも頑張ってて偉いねぇ｣
｢ん｣
律儀にお返事をくれる修也くんを寝室のベッドに寝かせたら任務完了。部屋に入るとき開け放った扉を閉めるために立ち上がろうとしたのだが。
｢……あの、修也くん｣
｢ん｣
｢ドア閉めたいからちょっと離してくれる？｣
｢いやだ｣
腰元をホールドされて動けない。先程の無気力は何処へ行った。こんなところで力の差を思い知る。諦めてベッドに潜り込むと、満足気に笑った修也くんの腕がわたしの背中に回り、胸元に顔を埋められた。いつもと立場逆転だ。
｢もう……すき｣
ぎゅうぎゅうと腕の中の彼を抱きしめ、頭のてっぺんにキスをする。今この時だけは彼の世界そのものになったような充足感を覚えた。
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作者名：おひめ | 作成日時：2023年1月31日 1時
