百四十四話 ページ5
.
「あの...娘さんたち怯えてますけど。」
緑谷...！！よかった。緑谷は見捨てなかった。
「...叱りつけた後なので。」
「叱っただけでではこんな風には普通なりませんよね」
私は通形先輩の考えは理解できるし、やったこともある。
...でも、今はそんなことできないよ。
「行こう。」
「いやァでも遊び盛りって感じの包帯じゃないですよね...」
「よく転ぶんですよ」
「こんな小さい子たちが声も出さず震えて怯えるって普通じゃないと思うんですけど」
「人の家庭に自分の普通を押しつけないで下さいよ」
「性格は様々だよね」
やめてよ通形先輩。この子を見捨てるようなこと言わないで。
すると緑谷が、エリちゃんの頭にそっと手をそえた。
「＿＿＿＿＿＿この子たちに何してるんですか。」
...緑谷は、すごいね。
このエリちゃんって子からしたらその言葉は絶対に心強いものになってるよ。
私にはできっこない。今声を発することもできないんだから。
治崎がため息をつくとがきこえると"路地で話そう"といってきた。
...なんか最近路地裏多いな。
すると、緑谷がエリちゃんをだっこしようとしていた。
「...緑谷だっこ下手くそ。私がだっこするよ」
「！ありがとう」
私はエリちゃんを優しくそっと抱きしめながらだっこする。
...とても暖かい
「大丈夫。あともうちょっとで終わるよ。今まで頑張ったね。エリちゃんは偉いよ。あともうちょっとだけ待ってて」
と、私は緑谷にすら聞こえないような小さい声でそっと呟いた。
「ぇ...」
驚いたようにこちらを見上げてくるエリちゃんの頭をそっと撫でながら治癒魔法をかけてあげる。
...怪我、凄く痛そう。
「実は最近エリについて悩んでまして、何を言っても反抗ばかりで」
「子育て...ですか、大変ですね。」
「ええ...難解ですよ、子どもは。自分が何者かになる・なれると本気で思ってる」
これ、もしかして殺気...！？
「あ、待っ、」
引き留める間もなくエリちゃんはするりと私の傍から離れて向こうの方に行ってしまった。
「え...」
私が抱えていた温もりが消えてしまう。
今までのように大切な人の命が零れていくときのように。
私は咄嗟に手を伸ばしエリちゃんの腕を掴もうとしたが、ギリギリのところで手は届かなかった。
「なんだ...もう駄々は済んだのか？」
「...」
エリちゃんは無言で頷く。
「そうか、それは良かった」
助けられたはずの女の子。私が伸ばした手は何も掴めずに虚空をさ迷っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜 - りーたん☆さん» ありがとうございます！！面白いと言ってもらえてめっちゃ嬉しいです！！体調の心配もしてくれててとても励みになります！頑張りますね！ (2020年8月20日 20時) (
レス) id: ced64b0a1f (このIDを非表示/違反報告)
りーたん☆ - 続編おめでとう！！！とても面白いです^_^体調に気をつけて、頑張ってください (2020年8月20日 16時) (レス) id: 6deecb8d9e (このIDを非表示/違反報告)
桜 - シバさん» コメントありがとうございます！！シバさんが安眠を確保できているならよかったです！！←←←更新頑張りますね！！ (2020年8月15日 17時) (レス) id: ced64b0a1f (このIDを非表示/違反報告)
シバ - 続編おめでとうございます！楽しみすぎて夜しか眠れません！←←更新頑張ってください！ (2020年8月14日 20時) (レス) id: 344258cf85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桜 | 作成日時：2020年8月13日 18時
