月を曇らす ページ22
エンマ様の瞳を見て、私は全身の毛が逆立った気がした。
圧倒的強者のオーラ。これがエンマの力だというの……?
「エンマ様っ……」
「大丈夫だ。行くぞ」
私は震える手を押さえて、息を呑んだ。
「はいっ…!」
私はエンマ様と共にカイラ様のいる屋敷に乗り込んだ。
警備は厳しかったが、私とエンマ様二人で突破できる程度だった。主にエンマ様が気絶させていたが。
「A、大丈夫か」
手を掴まれ、起き上がらせる。
エンマ様のペースは早く、息が上がってしまう。
やはりエンマ様の強さは異次元だ。
さすがぬらりひょん戦で圧倒的な力の差を見せつけただけある。
カイラ様はそんなすごい妖怪と並ぶ方になるのだ。
どれほど血の滲む努力を積み重ねたのだろう。
「ありがとうございます、エンマ様」
エンマ様の手を握ると、ガシャンッと大きな物音が奥からした。
「A……?」
掠れた声だった。
私はその声の主を見て、声を失った。
カイラ様のは禍々しい妖気を纏っていて、焦点も合っていなかった。そしてエンマ様に視線が向くと、彼の表情が酷く歪んだ。
「裏切ったのか!!A!!エンマに絆されたかァ!!」
エンマ様は私の前に立ち、剣を出してカイラ様に対抗した。金属がぶつかり合う音がする。
カイラ様は木刀ではなかった。
本当に傷つけるつもりなのだ。
カイラ様は正気を失っていた。
「カイラ!!目を覚ませ!!」
「煩いっ……お前さえ居なければ!!エンマ!!お前は何もかも『俺』から奪う!」
私はカイラ様をここまでさせた黒幕を探すことにした。
カイラ様はエンマ様に任せることにして、自分は黒幕を追わねば。
私が走り出すと、カイラ様が反応して、私に剣を振り上げた。
「A、逃がさないぞ。お前は俺のものだ」
「カイラ、さまっ」
「A!!」
エンマ様が間に割り込み叫ぶ。
「A、早く行け!!」
「はい!!」
❀
襖を開けていく。この奥に禍々しい妖気を感じる。この奥だ。
しかし、目の前には誰もいない。
なぜ、逃げた?いや、でも妖気は……
隠れている?
振り返った瞬間、お腹に激痛が走った。
「っぁ……」
「───あの半妖は反乱因子として完璧だったのに。お前のせいだ」
油断した。
私の完全なミスだった。
「っ……隕石の術!!」
男の頭を狙った。
そしてそのまま意識を手放した。
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