子猫の威嚇 ページ3
私の前世が大人だったというのもあり、かなりカイラ様が可愛く見える。
カイラ様の冷たい言葉も、自身の身を守るために強がっている子猫のように見えて可愛くてあまり胸が痛むことは無かった。まぁ、お父さんの漢方を要らないものとして突き返されたのは少し苦しかったけど。
私はあなたのすべてを知らないけど、今ここにいる妖怪達よりかはカイラさまを知っているから。
私だけはカイラ様の味方でいたい。そう思って、教室に戻ろうとした時だった。
「ふざけるな！！低級妖怪が！！」
カイラ様の怒鳴り声が聞こえたかと思えば大きな衝撃音と共に妖怪達の叫び声が上がる。
「カイラ様！？」
今まで大きな問題を起こしていなかったカイラ様が取り巻きの妖怪達を地面に押し付けている。
周りの妖怪達は見ているだけで止めようとしない。
確かに今のカイラ様は殺気立っていて、近づくのは危険行為である。
「ちょっと先生を呼んでくれない？私、カイラ様を止めてくる！！」
「はぁ！？危険だ！！やめとけって！！」
「いいから！！早く！！」
先生が来るのを待っていたら、カイラ様に押さえつけられている妖怪が耐えられないだろう。
カイラ様の瞳を見ると大きく揺らいでいた。
「カイラ様っ！！落ち着いてください！！」
私は走り出して、そう呼びかける。
そして、呼びかけた際に一瞬殺気が緩んだ。私はその瞬間を見計らって、彼の目元を押さえてから、抱きしめた。
「大丈夫ですから」
彼が小さく震えていることに気づいていたが、私は知らないフリをして彼の背中を撫で続けていた。
その後カイラ様は我に返ったように私から離れ、遅れて到着した教師と取り巻きの生徒達と共に行ってしまった。
❀
翌日、カイラ様の右頬が少し赤く腫れていた。
明らかに何かがあったのは明白である。
もしや昨日の騒動で家族に叱られたとか…？
胸がキュッと締め付けられた。
その日からカイラ様の周りの取り巻きは無くなり、カイラ様は一人で行動することが多くなった。
そして
「カイラ様！」
私が声を掛けると彼は驚いたように目を大きく見開いた後
「…目障りだ」
私から視線を逸らしたカイラ様。
私は完全にカイラ様から避けられるようになってしまった。
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