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Story.10 ページ10



「紫原くん」


がらりと遠慮なくドアを開けて彼の名を呼ぶ。

入り口に立っただけでは
彼の姿を確認することが出来ないが

ここに彼が居ないことなんて
十中八九あり得ない。


「なにー」


ほら、やっぱり。


彼は部屋の奥にあるソファから
当たり前の様に反応する。

まるでここが家であるかの様な振る舞い。


事実、ここに足を踏み入れるのは
彼と彼を探しに来た私くらいである。


そんな埃っぽいこの空間を
埃が舞わない様にゆっくりと歩いて

彼が寝転がっているソファの前で
しゃがみ込む。


「またSHRサボる気ですか」

「んー」

「サボっちゃ駄目でしょ」

「んー」

「頭良くても欠席多いと後々困るよ」


受験とか受験とか受験とか。


そう言って指折り言うと
無気力な顔はそのままに鼻で笑う彼。


「大丈夫でしょ」

「なんで私より頭良いの、普通に悔しい」

「Aちんが馬鹿なだけでしょ」

「…むかつく」


今日は欠席になりそうだな、なんて
頭の中で苦笑する。


授業が始まるまで
二人で喋りながらここで過ごそう。


そう考えていた矢先。


「Aちん、キスしよ」

「え、」

「キスしたら教室戻るし」


どこからそんな話になるんだ。


突拍子もないその発言がまた
私の心臓の動きを速める。


彼と付き合ってから
三年は寿命が縮んでいる気がする。


本当に勘弁して欲しい。


「…今日朝したでしょ」

「良いじゃん」

「良くない」


心臓が。


「ねー、Aちん」

「だからしないっ、ん」


両頬を片手で掴まれて彼の唇まで一直線。


朝よりも長く塞がれる口と

突然のことで行く場所を失い
空中で彷徨う私の両腕。


「っ、もう、!」


そっとゆるりと離された唇。


その動きがどうしてか恥ずかしくて
不貞腐れた様な、拗ねた様な声を上げる。


「教室戻ろ」

「…凄く不服です」


結局私は彼に翻弄されるのだった。

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羽仁子(プロフ) - 魅悪さん» ありがとうございます(´;ω;`)!頑張りますね! (2016年9月21日 16時) (レス) id: 6677755af2 (このIDを非表示/違反報告)
魅悪 - ずっと読んでました!更新頑張ってください(*><*) (2016年9月19日 5時) (レス) id: ce5526d871 (このIDを非表示/違反報告)
羽仁子(プロフ) - 赤紫さん» わわ、嬉しいです( ; ; )ありがとうございます!そう言って頂けることが何よりも嬉しいです!! (2016年4月29日 23時) (レス) id: 6677755af2 (このIDを非表示/違反報告)
赤紫(プロフ) - はじめまして!むっくん大好きなので更新ずっと待ってました(^^)この小説面白いので大好きです(^^♪最後に進学先決定おめでとうございます^^* (2016年4月29日 19時) (レス) id: 726f403aea (このIDを非表示/違反報告)
羽仁子(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございますp(*^-^*)q 面白いと言ってもらえるととてもやる気でます嬉しいです! (2016年4月1日 16時) (レス) id: 6677755af2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:羽仁子 | 作者ホームページ:むっくんのお菓子  
作成日時:2016年2月15日 23時

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