story6*遠慮はなしに ページ8
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「ごちそうさま。」
「お、お粗末さまでした……!」
並べた和食の朝ごはんを残さず綺麗に食べてくれた太宰さん。
私の顔を見て『美味しかったよ』と微笑むところ、女の子の喜ぶポイントを分かっている。
食器の片付けをしようと立ち上がると、それを太宰さんが制止した。
「食器の片付けは私がやるから、君は座ってよ。」
「!!? そ、そんな雑用を貴方にやらせるわけにはいきません!!」
太宰さんの言葉に、私は驚いて目を見開く。そして同時に、凄い勢いで否定をする。
しかし、1度お椀を持って立ち上がってしまった太宰さんを止める術はない。
太宰さんは振り向くと、ぱちっとウィンクをした。
「私に任せなさい。」
その小さな姿に、静かに胸が高まった。
私は顔を赤くして頷くことしか出来ず、上げかけた腰をもう一度下ろした。
かと云って、太宰さんが喋らなければ私は口を開かないわけで………
辺りに響いているのは、水道の音だけだった。
「A、」
そんな中、私の名前を呼ぶ声だけが一際大きく耳に届いたようだった。
私は、ぱっと顔を上げて彼の方を見る。
「私がなんで君に同居を提案したか、分かっているのかい?」
ドクリ、と胸が音を立てた。
分かっている。太宰さんが、私を此処に住まわせてくれている理由。
「わかって、る……と思います………」
「云ってごらん?」
食器を流しながら、視線だけで答えを促す。
口にする勇気など、私にあるはずがない。けど、云わないという選択肢はもっとない。
「私のことが……好き、だから………ですか?」
ぶわっ、と顔が熱くなるのがわかった。
自分で云うなんて、恥ずかしすぎてどうかしてしまいそうだ。
だけど、はっきり覚えてる。
1ヶ月前、入社初日の私にさりげなく告白してくれた太宰さんのことを。
恐る恐る顔を上げると、片付けを終えた太宰さんの顔がすぐ近くにあった。
「合ってるよ。私が、君を此処に置きたかったんだ。逃がさないようにね。」
深い瞳に飲み込まれ、逃げられないようだった。
太宰さんは、私の髪をするりと撫で、そのまま頬に手を当てた。
「君は、『居候人』じゃなくて『同居人』だよ。変に遠慮したら私が許さないからね。」
「………は、はい…!」
私のことを思ってくれている優しい言葉が、脳裏に響き渡る。
此処に来れて良かった、と心から思いました。
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鈴蘭(プロフ) - ウナさん» 私も書いててひえええってなってます笑(?) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - みそしる大臣さん» そんなドキドキをお届けできているなんて嬉しい限りです(^^) (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - SAKA0829093さん» ありがとうございます!ダラダラ更新で本当すみません… (2019年4月30日 12時) (レス) id: 2e99d5c18a (このIDを非表示/違反報告)
ウナ - もうヤバイですマジでもうヤバイですよ!!!!ひええええってなります(?) (2019年4月3日 19時) (レス) id: 0bc8f10023 (このIDを非表示/違反報告)
みそしる大臣 - 夢主より僕の方が早くキュン死にしそうだ…心臓が持たない! (2019年3月30日 23時) (レス) id: 487407bef1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年5月25日 1時