68 ページ24
・
肩でゼェゼェと息をしながら、男たちを睨みつける志麻くんがいた。
「志麻、くん」
こちらを見た志麻くんは少し苦い顔をしながら、「おまたせ、ちょっとだけまっててな」と私を安心させるように言った。
「お前はバカだなぁ、こんな脅しでまんまとここへ来るなんて。罠だって気づかなかった訳?」
挑発するように口角を上げる男にイライラしたが、志麻くんは表情ひとつ変えずに淡々と返す。
「おう、勿論気付いた上で来たで」
「は、笑えるわ。そんなにこの女が大切か?」
「当たり前やん。こんなに大切な人、他におらんわ」
ずっと滲んでいた涙が、溢れ出てきた。
屋上であったことだとか、もう会えなくなる、話せなくなる と悲しんでいたこととか、全てもうどうでも良くなったてきた。ここに志麻くんがいるだけで、全て満たされた。
3人だった男たちは、いつの間にか15任程に増えていた。
それに怯みや不安を一切見せず、右足で1人を思いっきり蹴飛ばしてみせた。
そこから左手で胸ぐらをつかみ引き寄せてから蹴りを入れたり、避けるときに左手から手をついたり、少し不自然な動きが見える。
(骨折、って……右手だよね)
右手を骨折だなんて、右利きな彼からふれば不利すぎる。そう考えているうちに、志麻くんは1発くらって、床に倒れ込んだ。思わずギュッと目を瞑る。次に目を開けたときにはもう立ち上がっていた。
やはり志麻くんが強いとはいえ、15対1だ。不利すぎる。3人床に伸びているのが見えたが、まだ10人以上いる。もう志麻くんは息が切れている。
「私にも、なにかできること……!」
思いっきり力を入れてみれば、少しだけ緩む拘束。そこから拘束を解いて、携帯を取り出す。
みんな志麻くんに釘付けで私には気づいていないみたい。すぐに着信をいれた。
・
1761人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちち(プロフ) - コメント失礼します。他サイトにてこちらの作品と同じ題名、同じ内容の小説を発見致しました。何回も見返したのですがやはり文章も同じで気になったのでコメントさせて頂きました。プリ小説というサイトで連載はされていますか、? (2023年4月18日 0時) (レス) id: 65f0ff2c55 (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - すっっっごく面白くて!大好きです!一気読みしちゃいましたw (2020年5月24日 16時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - 完結おめでとうございます!この作品が好きすぎてもう何回も何回も見直しています! 最後ら辺は、子を見守る母のような気持ちになりました(笑)ほんとにお疲れ様です! (2020年5月7日 16時) (レス) id: aa4022e14b (このIDを非表示/違反報告)
ひより(プロフ) - 完結おめでとうございます!この話の二人が永遠に見てたいくらい好きなのでこの2人のその後みたいな話短編集とかで欲しいです、、 (2020年4月2日 0時) (レス) id: 4f83e9d9b1 (このIDを非表示/違反報告)
七つ子(プロフ) - お疲れ様でした!この作品は私にとって、お気に入りの中のお気に入りでした!新作も読みます!ありがとうございました! (2020年4月2日 0時) (レス) id: e81a79aa4e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ