episode:9 ページ10
｢俺はこの城で国王の部屋の見張り役をしていたが、用があって偶然そこのお嬢様さんの部屋の前を通ったんだ。その時に中から聞こえてきた会話で分かった。息子じゃなくて娘なんだと。すぐにうちの国王に連絡をして国の者を何人か手配してもらった｣
｢なるほど。信頼を寄せているお前になら国王を部屋から出すことは容易い、と｣
｢そうだ。夜に勤務していた見張りたちは休憩時間に飲んでいた飲み物に全て睡眠薬を仕込んでいたから眠っていたんだ。その間に、国王を呼び出して誘拐した｣
｢でも、俺が今朝見張りを交代した時はみんな起きてたで…？｣
｢短期型の睡眠薬だな｣
｢さすがしょっぴー｣
｢いつ盗んだんだよ、ったく｣
｢お前が鍵を開けっぱなしにして部屋を飛び出すのが悪い。俺たちは賭けに勝ったんだ｣
『賭け…？』
｢あの日ぶつかりそうになった見張り番はお前か。緊急の患者さんだったんだよ。あと3秒遅れていたら命はなかった。鍵かけてたら間に合わなかったかもしれない｣
翔太の言葉で私の疑問はかき消される。
掘り返す間もなく佐久間がエスピオンに近づいた。
｢で、密告者はこの国にあと何人いるの？｣
佐久間は剣を鞘に収めたまま腰から抜くとエスピオンの顎に当てる。
｢今は俺だけだ。あんな置き手紙をしておいて国のやつらを残しておくのも危険だからな｣
｢それは本当なんだな？｣
｢ああ｣
｢あ、あのさ｣
｢なんだ？｣
｢女の密告者って、いる？｣
｢女？男しか送り込まれていないはずだが｣
｢そっか…！｣
その後も父上の生存確認などを聞き出し、逃げられないよう誰とも連絡を取ることのできない地下牢に放り込んだ。
｢なんだぁ〜！俺のせいじゃなかった！！！俺！殺されなくて済む！生きられるんだ！！！｣
舞い踊る、深澤辰哉。
｢いやでもふっかさん冷静に考えてみて？その連絡先がわからへんくなった女の子は密告者やないとしたら、フツーに振られてもうただけちゃう？｣
｢うっ…｣
｢だっせ｣
｢ぐはっ｣
｢ふっか｣
｢はい｣
｢どんまい｣
｢ひっ、照ぅぅぅうう〜！｣
うるさいふっかを照たちに任せて、私は何も喋らずに壁にもたれて床を見つめている彼の元へ。
『翔太』
｢んー？｣
『いつもみんなの命を背負ってくれてありがとう』
｢なんだ、急に｣
きっと鍵をかけずに出ていったあの日のことを後悔しているに違いない。
だけど、自分がいたのに目の前で患者さんが亡くなる方がきっと翔太はもっと後悔するだろう。
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涼-suzu-(プロフ) - むむさん» こちらにもありがとうございます。デビュー作のため今よりも拙い部分が多いと思いますがそう言っていただけて光栄です。こちらこそありがとうございます。 (2022年5月21日 14時) (
レス) id: 7e38231ab5 (このIDを非表示/違反報告)
むむ - 作者様の書かれる作品が全て好きです！！父上のために命を懸けて戦う姫と、いろんな過去がありながら一つの目的のために戦う9人がかっこよくて仕方なかったです！素敵な作品をありがとうございます (2022年5月21日 10時) (レス) @page32 id: e8dca0b64d (このIDを非表示/違反報告)
涼-suzu-(プロフ) - あやかぽん。さん» こちらも読んでくださったのですね！ありがとうございます。そういう風に言っていただけて本当に書いた甲斐がありました。その虚妄は…ぜひ、お聞かせください(ｷﾗｼ) (2021年9月18日 15時) (レス) id: e1cb7f51d3 (このIDを非表示/違反報告)
あやかぽん。(プロフ) - 面白かったー！！！埋もれてしまっているのが勿体ない。。もっと色んな人がここにたどり着いてくれたらいいのに…。。結婚したあとも気になって虚妄が止まりません(止めて) (2021年9月18日 9時) (レス) id: 2ac8db89d5 (このIDを非表示/違反報告)
美紀(プロフ) - SnowMan大好きです亮平君と翔太君と涼太君寄りのオール担当です最高です更新大変だと思います頑張ってください応援してますコロナウイルスに気をつけてくださいね (2021年3月1日 16時) (レス) id: e19dcb272d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涼-suzu-
| 作成日時：2021年2月25日 16時
