プリンセスと9人の騎士

episode:10(Shota.W) ページ11

翔太の実家は隣町のそこそこ大きな病院。

医院長先生である翔太の父親には私たち家族もよくお世話になっていて、私が産まれたのも翔太の病院。

小さな国だから大きな病院はここだけ。

いろんな町から患者さんが来るため忙しい父はほぼ家に帰って来ず、母親と2人暮らし状態。

翔太は遊んでくれない父が大嫌いだった。

幼なじみで仲良しな舘さんも急にいなくなって暇な毎日。

そんな日々を過ごす中で父親が倒れたと病院から連絡が入り母と2人で病院へ。

しかし間もなくして息を引き取ったことを確認。

原因は心臓発作だった。

翔太はとても後悔した。

もっと父親と話せばよかった、顔を見とけばよかったと。

久しぶりに見た父親は酷く疲れた顔で眠っていたらしい。

数日後には父親を追いかけるように母も他界。

あれは私が3歳、翔太は14歳の時だ。

彼の両親のお通夜で翔太が1人、壁にもたれて俯いているのを見かけた。

父上に背中を押され翔太の元へ行くと私に気づいた翔太は迷子？どうした？と優しく微笑んでくれた。

その笑顔があまりにも切なくて壊れそうで翔太の頭を撫でた。

そして泣けない翔太の代わりになのか自分でもよく分からないけれど、私は翔太の前でたくさん泣いた。

両親がいなくなった翔太を父上が引き取ることになり、舘さんと再会。

頑張っている舘さんを見て火がついた翔太は猛勉強して22歳で、医者になった。

実家の病院は父親の兄弟が継いでいるため、翔太はこの町の地域の医者として務めることにした。

患者さんに出向いてもらうのではなく、自分が出向いて診察をする。

父親のようなみんなに愛される立派な医者になりたい。いつかそんなことも話してたな。

『翔太のおかげでこの町の住民は元気でいられるんだよ。だからありがとう』

みんなから愛される医者になれてるよ、翔太は。

父上のことで落ち込んでるかもしれないけど…父上はまだ生きている。

命があるからまだ助けられる。

｢ふっ｣

『あ、笑った』

｢そんな俺はいつもお前に元気をもらってるよ。ありがとう｣

私の身長まで屈むと頭にポンッと手が置かれた。

『まーた、翔太は子供扱い…』

｢まだ17だからな。18になったらもっとオトナな女性として接してやるよ｣

この国では18歳で成人となる。

｢翔太が姫を口説いてる…｣

｢く、口説いてねーわ！｣

見ていた佐久間にからかわれると、仕事があるから話がまとまったら教えてと城を出ていってしまった。

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