続き。 ページ12
幻太郎さいど。
「っ、ねえ!A来てない!?」
「……は?」
執筆が一区切り付き、その場に寝っ転がっていた時。
マナーモードにしていた携帯が震え出した。
画面に表示された名前に今日はどのように出ようかと考えながら通話に応じる。
先程の一瞬で思いついた言葉は形になることなくかき消された。
“だーから!Aそっち来てないかって言ってんの!”
幻「……もしかして貴方。何かしでかしたのですか?」
“うーん。心当たりはないんだけ、あ”
言い切る前に、思い出したように低い声を上げる彼。
幻「ほう?その様子だと」
“あの時、Aっぽい後ろ姿見たかも……”
素になりかけてることは伝えずに黙って話を聞いた。
公表している上で容認しているのだから、よほど信用しているのだろうと思ってはいたが、彼女がそのようになるのは正直、頷けた。
幻「ふむ。それはまず貴方が謝るべきでしょう」
“え、なんで!?”
幻「何故って、貴方言ってたじゃないですか。一番可愛いのはAだって。どうせ彼女にもそう言っているんでしょう?」
少しの間から図星と見える。
自分で言っておいて忘れるなよ。
幻「それじゃあ、妾は忙しいので失礼するでおじゃる」
女性のような声を出し、語尾にハートをつけるかの如くこう言った後、返事を待たずに通話を切った。
まあ彼のことだ。大丈夫であろう。
乱数さいど。
考え事をしていたら、いつのまにか通話を切られてしまったようだ。
幻太郎の所に居なければ、帝統の所にも居ないだろう、なんとなく直感でそう思った。
改めて事務所のテーブルに置かれたメモを見つめる。
“今日は帰らないです。ごめんね”
いつも通りの整った字だな、なんて思っていたが、よくよく見ると僅かに、否。だいぶ震えているように思えた。
やはりあの後ろ姿はAだったのか。
言わずもがな、僕の一番はAなのだ。
あそこで一番という言葉を出したことに物凄く後悔。
A以外の人物には言わないと決めていたのに、何故うっかりと言ってしまったのだろう。
「あーあ。どーしよ」
こう呟いて座っていたソファの背もたれに頭ごと身を預け天を仰いた。
幻太郎の前に掛けた電話には出てくれなかった。
どうしようもない。“あとで”があるならキチンと謝ろう。
こうなったのは、今回が初めてではなかった。
ボーッと天井を見つめる。
僕の意識は携帯の着信音によって現実に戻された。
“ねえ、乱数。今からこっち来れる?”
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真歩路(プロフ) - まぁらいおんさん» わあっ!見て頂けてるんですね〜!リクまでありがとうございます!書くのが遅い上に濃厚系もヘタなのですが、少しでもご期待に添えるよう頑張りますね、、!すごく嬉しいです〜! (2018年11月19日 19時) (レス) id: c4fa7f7861 (このIDを非表示/違反報告)
まぁらいおん - いつも見てます!すごくおもしろいです(´∀`*)リクエストいいですか??乱数が夢主に嫉妬して濃厚な感じの展開になっていくお話が見たいです!お願いしますm(__)m (2018年11月19日 18時) (レス) id: cb3aeae411 (このIDを非表示/違反報告)
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