【d!】あいの風に飛んでゆけ【企画】 (ページ8)

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暫くして日が落ち始めた辺りで、私達はカフェを後にし、海へと足を進めていく。
コネさんに支えて貰いながら、私は遂に砂浜に足を付けることが出来た。

『…わぁ、凄い…空がオレンジと、紫と…』
「おん、色んな色に見えるなぁ…」

それはまるで、夏の果て。

異世界へと続きそうな黄昏刻の空に、なんとも言えない気持ちが込み上げてくる。
何時も、周りに腫れ物の様に扱われ、遠出なんて出来なかった。
でも、今、彼のお陰で私はこの景色を見る事が出来ている。

『…っコネさん、ありがと…っ』
「大袈裟やなぁ。こんなん、また来年も見せてやるよ。あ、再来年もその次もな！」
『っはは、カッコイイなぁ…』

いつの間にか出ていた涙を袖で拭っていれば、その手を取られ、優しく繋がれた。
彼の顔を見てみると、丁度暗くなり始めて見えづらい。

「…A、俺と居って辛くないか？苦しくないか？」
『へ？…ふふ、そんな事ないよ。コネさんの隣だと、辛さも苦しさも全然気になんない』

寧ろ、息がしやすい。

それは、まるで大切なピースが埋まったかの様な。暗く、孤独な心を救われた様な。
語彙力の少ない私には表現しにくいが、もし例えるならば。

『コネさんは、私の特効薬なんだね』

そう言うと、コネさんから少し笑いが聞こえた。流石に恥ずかしい事を言い過ぎたらしい。
それに気付いた私は彼の手を強く引く。

『も、もう帰ろ！早く、早急に！』
「ウフフフッ！せやな、無理せず帰ろか？」
『何時まで笑ってんの！』
「アーーーッハッハッハ！！」

嬉しそうな笑い声の響く浜辺。
私達は、手を繋いだまま家へと帰っていく。

「…なぁ、A」
『何？』
「ずっと、一緒に居ような」
『…居てくれるの？』
「当たり前やん。俺は真実しか言わんで？」
『…プロポーズみたい』
「そのつもりやけど？」
『えっ』

勢いよくコネさんの方を見ると、彼は空色の瞳を細めて此方を見ていた。
あまりにも視線が外れず、そして外せない。

「駄目か？」
『っ…だ、だめじゃない、です…』
「よしっ！じゃあ、これからもよろしくな！」

笑顔で手を引かれ、抱き締められる。
顔が熱くなりながらも、私は答えるように彼の背に手を回し、彼の愛を甘受した。

「…やっと、手に入れた」

その言葉と笑みに、気付かないまま。