【d!】あいの風に飛んでゆけ【企画】 (ページ7)

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Day3 こどくのなつ／kn ページ7

side You

昔から、体調を崩しやすかった。
その中でも、湿気やら暑さやらが関係しているのか、夏は特に。

「A、大丈夫か？」
『っうぅ…ごめん、ちょっと無理そう…』
「ん、ええよええよ。そこの店とか入ろうや」

高校生の最後の夏。
私は、幼馴染である捏島孝之と海の街まで来ていた。そこで案の定、体調を崩して休んでいる。
近くのカフェに入れば、対応は全てコネさんが済ませてくれて、私は席に座るだけで良かった。

「ふぅ…どう？落ち着いた？ほら、水。セルフサービスやったから持って来たで」
『うん、少し…』

彼からお冷を受け取り、冷たい水を喉に流し込む。そして深呼吸を数回すれば、気持ち悪さや目眩が落ち着いてきた。

『ごめんね、私が海行きたいなんて言ったから。付き合わせちゃって…』
「あー、気にすんなって！俺も来たいと思っとったし！」

コネさんはニカッと笑って頭を撫でてくれる。
身体の弱い私を気遣いながらも邪険にしないのは、もう家族と彼だけになってしまっていた。

「もう少し日が落ちてから外出よな。俺もこの暑さ結構きちぃ…」
『そうなんだ。コネさん、夏に生きる男って感じなのに』
「え、俺そんなイメージあるぅ？」
『だって冬もサンダル履いてるし、見てるこっちが寒かったよ？』

そう言うと、彼は突き抜ける様な笑い声を上げた。この豪快な性格に、私は何時だって救われている。
彼は私にとって、モヤモヤした気持ちを一気に晴らしてくれる、太陽みたいな存在だった。

「んじゃ、まだ時間全然あるし。なんか頼むかぁ！A、何にする？」
『そうだね…あっ』

メニューを見ながら、ふと窓に視線を向ける。
そこには、夏に相応しい青々とした葉の中に咲く、紅色の花があった。
アンバランスな様だが、澄み渡る青空とマッチして、夏らしさを演出している。

『あれってコネさんの家の庭にも咲いてた花だよね？此処にも咲いてるんだ』
「ん？...あー、夾竹桃(キョウチクトウ)か。確かに咲いとったな」
『キョウチクトウって言うんだ。花言葉は？』
「そんなん俺が知っとる訳ないやろ〜？」
『ですよね〜』

呆れた彼の声に、私は思わず笑った。