. ページ18
.
「なら尚更だよ。私達は別れて正解じゃん」
「…反論は出来ないけど、あと少し聞いてくれないか」
テーブルの上で伸ばされた手はコップを持つ私のそれに向かってきて、思い留まったかのように引っ込んでいく。今日の夏油はいつもより強引なのにちゃんと引き際は弁えていて、それだけのことに翻弄されそうな私がとっても嫌だ。
大人しく口を噤んだのを見て、彼は一息ついて言葉を続けた。
「たまたま私の帰宅が早かった日に、家が真っ暗で少し怖くなったんだ。君が気付いて出て行ってしまったんじゃないかって。もう一緒には居られないんじゃないかって。当たり前の様に隣にいた君が居なくなるなんて、その時まで想像していなかったんだ」
そんな別れ際に往生際の悪い男が吐くようなテンプレを言われたって、今更浮気がなかったことにはならないし、ヨリを戻そうなんてなる訳が無い。何より、今まで自分が心を許していた男がそこらの浮気性と同じ様な思考を持っていたことに軽く幻滅している。この男も所詮クズなの忘れるなよ、と脳内の硝子が警鐘を鳴らしている。
「都合のいいことばかり言っているのは重々承知だ。それでも君がどうしようも無く大事で、愛していて、片時も離れ難かった」
「じゃあ、なんで離れるって」
「私なりのけじめだよ。君ときちんと向き合う為に一度距離を置いて、相手の子との関係も綺麗に切ろうと思っていたんだ」
真っ直ぐに見返す黒い瞳には、精一杯強がって平然を装う私だけが映っている。その言葉を直ぐに飲み込んで消化するなんて所業は、私には出来ない。出来る訳がない。「離れよう」って言われたあの夜、やっぱりかって感想で辛さ悲しさを誤魔化したのに。仕事以外では全く関わらないようにしたのに。
.
574人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狐うどん - 夏油推しなので最高でした! (2021年12月31日 12時) (レス) @page27 id: 36d16ee809 (このIDを非表示/違反報告)
ユコ(プロフ) - 唯梨さん» ありがとうございます^^同じ夏油推しさんに言って頂けるほど嬉しいことは無いです…! (2021年5月24日 12時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - はじめまして。引き込まれて一気に読んでしまいました。夏油推しにはたまらないお話でした…。 (2021年5月22日 10時) (レス) id: 10a0ab61a8 (このIDを非表示/違反報告)
ユコ(プロフ) - うさん» 刺さりましたか!やったー!短編なので長くは続きませんが、もう少しお楽しみいただければと思います! (2021年5月13日 6時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユコ(プロフ) - もちうさぎさん» 今日中に完結する(予定な)のでお待ちくださいね! (2021年5月13日 6時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年5月8日 13時