【夏油傑】その呪い、重量オーバー

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異変が訪れたのは少ししてからだった。
私はそれ程お酒に弱くない。寧ろ人よりも少し強いかもしれない。硝子には永遠に勝てないだろうけど。

「どういう人がタイプなの？」
「う〜ん…私の仕事に理解ある人、れすかね」

だから可笑しいのだ。トータル3杯しか口にしてないというのに、もう呂律が回っていない。しかもこれは酒酔いとかでは無い、と思う。頭がグラグラとして瞼が重い。酷い眠気だ。高いヒールでなんとか踏ん張って立ち、さっきウェイターさんに注いでもらった水を呷る。ひんやりとした感覚が意識を僅かに引き戻す。
ぱっかり開いた背中、レースがあしらわれた胸元、膝よりも短いドレス丈。ワンチャン野郎×2がさっきからそういうとこにしか目をやっていないのが分かる。私が気付かないとでも思っているのかもしれないけれど、曲がりなりにも私は呪術師だ。それくらいの視線に気付かないはずが無い。実に不快。気持ち悪くて仕方ない。

「あれ、酔い回ってきた？大丈夫？」

唯一合格点を叩き出している男が心配そうに私の顔を覗き込む。へらりと笑ってやるが、正直な所大丈夫ではない。帰らなきゃ。取り敢えずタクシー捕まえて、自宅の住所告げれたら寝ても大丈夫だから。

「そろそろわたし帰りますね」
「うん、そうだね…」
「あっ最後に連絡先だけ交換しませんか？Aさんと喋るの楽しかったんで！」
「じゃあ僕も！」
「あは、ありがとうございます」

じゃあ…とその場にいる全員を友達登録する。アタリくんだけでいいって思っていたけど、今更ごめんなさいと断るのも面倒だ。さっさと追加してさっさと帰る。自分を守るので精一杯だ。

「じゃあ、ありがとうございました…わっ」
「おっと…」

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