名前は知らない ページ36
周囲を警戒しながらも、釘崎さんについて行く。ここは経験者について行くのが無難だろう。この中では彼女が一番場数を踏んでいる。
「時短時短。二手に分かれましょ。私は上からワンフロアずつ調べるから、アンタたちは下から。さっさと終わらせてザギンでシースーよ」
先先進む釘崎さんに悠仁が待ったをかける。それは私も同感だ。悠仁はいいとしていくら経験者でも彼女一人は心配だ。
「呪いってあぶねんだよ」
この一言が癇に障ったらしい。悠仁は見事に蹴飛ばされていた。おお、美しい。
「最近までパンピーだった奴に言われたくないわよ!さっさと行け!アンタもよ!」
フンッ、釘崎さんは今度こそキビキビ歩き出した。
「今日ずっとお前の情緒がわっかんねんだけど!」
「だからモテないのよ!」
「何で俺がモテないねぇって知ってんの!?テメーは言うほどモテんのかよクソが…俺、モテてたりしない?」
「……頻繁には聞かなかったかな」
頻繁にはね。ゾワリ、呪霊の気配。
刹那、体の浮遊感と、飛ぶ呪霊の腕。
「大丈夫か?A」
「……なんで小脇に抱えんの」
「お前あのままだったら怪我してたぞ」
それは知っている。私が聞いてんのは咄嗟に攻撃を避ける体を捕まえて何故小脇に挟んだかだよ。私の反射神経は悪くないが悠仁はそれを優に上回っていた。私が体を動かそうとした頃には、悠仁の体は脳の命令を実行している。身体能力で悠仁には勝てない。ちょっと悔しい。
「それについてはありがとう。でもご心配はなく。悠仁は悠仁の心配をして。私も一応呪術師になる人間だから、いつまでも悠仁に守ってもらわけにはいかない」
むしろ逆にならないと。どれだけの身体能力を持っていても悠仁に呪術は使えない。一応でも使える私が悠仁を守らなければ。少しでも別れが近くならない為に。
「悠仁、私がアイツの気をひくから攻撃して」
「え、どうやって」
悪いが説明の時間はない。訓練を思い出せ。母さんの動きを再現するんだ。
「行くよ」
「……応」
手には黒い小型のナイフ。呪霊に向かって走り、振り上げてきた腕をギリギリで避けて懐に潜り込む。勢いを殺さないように足めがけナイフを滑り込ませた。スパッという音で呪霊の体が傾く間に抜け出し、もう片方切り落とす。そこに悠仁が俊敏な動きで攻撃とトドメをさし、呪霊は動かなくなった。
「うん、俺動けんね。Aもお疲れ。怪我は?」
悠仁が私に笑いかける。うん、使える。母さんの呪術。
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時