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記憶【前編】 ページ31

痛い、痛い。攻撃されて倒れた私を見下ろす青い瞳が憎い。


「恨むなら僕の要求を聞かなかった自分を恨みなよ。まあ、今だったらまだその傷を治してあげるからさ」


ニコリ、薄っぺら笑みを浮かべて呪術師は私の胸ぐらを掴んだ。無理矢理目を合わせられて、背筋に冷たいものが走る。全てを見透かされてそうで、痛む体を無視して顔を逸らした。


「ありゃ、聞いてたよりも随分気が強い人なんだね。流石両面宿儺に寄り添う人間って感じ。まぁいいや、両面宿儺の弱点を教えてくれたら早くこの手を退けて傷も治してあげるからさ」


早く吐きなよ。


耳元で囁かれてゾワリ、旦那様とは大違いだ。お前になんか興味はないんだよ。誰が旦那様の情報を吐くか。んなもんあるわけもないし。憎しみを込めて睨んでもコイツにはどこ吹く風。


「そういえば君、妾の子なんだって?可哀想に、親に売られて生贄にされるなんて不幸も良いところ。同情するよ」


急に私の人生を嘆きだした呪術師はペラペラ言葉を紡ぐ。


「僕は落ちぶれた分家の人間でね。本家の五条家を持ち上げる為だけに生まれてきたものなんだよ。そこに僕の意思は関係ない。そこでだ、今まで見下してきた人間が両面宿儺を倒したらびっくりするだろうな」
「それが、何」
「分からない?僕には両面宿儺の死が必要なの。呪術師は宿儺の死を望んでいる。つまり、君の旦那は死んだ方が人の役に立つんだ。君、本当に不幸だよね。そんな奴の所に嫁いだんだから」


何も言わないのに痺れをきらしたのか私を壁に投げつけた。叩きつけられた痛みで顔を歪める私を、最後のチャンスだと青い瞳が刺す。


不幸?私が?旦那様に嫁いで可哀想?…ふざけんなよ。


「可哀想なのはお前でしょ。自分の物差しでしか幸せを測れない奴が旦那様を殺す?バッカじゃないの」


怒りで目の前が真っ赤に染まる。私に幸福を与えてくれた、生きる意味を与えてくれたあの人に嫁いで不幸だなんて思った事は一度たりともない。


「私は旦那様を愛している。ずっと、ずっと、例え仏が私の記憶を消そうとも、それに逆らってでも、私は旦那様に恋をする。愛する。それが世の摂理だ。覚えとけよクソ野郎」
「……君、イカれてんね」


もう息をするのも苦しい。呪術師はもうすぐ私が死ぬと思ったのか去って行った。私はその背中を見つめる。絶対に忘れない、身を焦す憎しみで溢れた視線をいつまでもあの背中に焼きつけた。呪いをかけるように。


________暗転。

記憶【後編】→←両面宿儺と妻の小話【番外編】



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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ゆうちゃんンンン(プロフ) - コメント失礼します。この作品を作っていただきありがとうございます。大好きですもし良ければなのですが、前世の記憶が無いバージョン?を作って欲しいなと思っています。自分、悠仁と宿儺推しでして、図々しいと思われるかもしれませんが気が向いたら作ってほしいです (8月2日 13時) (レス) @page50 id: f5df7aa05f (このIDを非表示/違反報告)
ソラ - 大好きですぅぅ (2022年1月25日 1時) (レス) @page50 id: 639ef9d5fe (このIDを非表示/違反報告)
moo(プロフ) - タイトルがモロ好みで作品も最高でした!最後の蛇足も良かったです! (2021年6月22日 20時) (レス) id: 36860c259a (このIDを非表示/違反報告)
西 - たまに出る夢主ちゃんのツッコミっぽい口調がとてもおもしろいです。。ありがとうございます。 (2021年3月29日 2時) (レス) id: a86aefda0e (このIDを非表示/違反報告)
宿儺 - 宿儺マジ神かよ♪素敵 (2021年1月20日 19時) (レス) id: c0f52421e2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2020年12月19日 15時

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