前世は両面宿儺の妻だった。【呪術廻戦】

フジの花をあげる ページ16

知らなかった。どうやら旦那様は指だけになっていたらしい。それを悠仁が全て取り込んで処刑。両面宿儺はこの世から消える。


旦那様の指は笑えてくるくらい不味いと、悠仁の感想。見た目も結構個性的だった。私が死ぬ前は綺麗な手をしていたので、私の知らない間に何かあったのだろう。虚しい。呪術師から聞くまで何も知らなかった私は勝手に今も何処かで生きていると、信じて疑わなかった。実際死んではいなかったが、生きてもいなかった。


悠仁が旦那様の指を全て取り込んで死ぬのなら、私にも一本、指をくれないだろうか。悠仁は器だから死なずに自我を保っているらしい。私が取り込んだら、きっと死ぬ。旦那様が死んだら、私も死にたい。わがままが通るなら、旦那様の手で殺されたい。だから、指が欲しい。


「君に両面宿儺の指は渡せないなー」


五条はいつの間にか私のすぐ隣の壁にもたれていた。無意識に悠仁の喉元を見ていた目は五条を映す。


「君に聞きたいことがあるんだけど」
「言わないよ」
「おいっA！」


悠仁に肩を掴まれて揺さぶられたが、言うつもりはない。べーー、だ。


「じゃあ、取引しよう」
「取引？」
「君が知ってる事を全て教える代わりに、悠仁と代わった宿儺に合わせてあげる」
「え」


目の色が変わったと五条は笑う。悠仁に顔を向けると、そーなんだよなー、気の抜けた返事が返ってきた。


旦那様には逢いたい。とても。でも、私が旦那様について喋ることで少しでも不利にあるような事があれば、それは旦那様を裏切ったのと同じだ。判断に迷う。私の答えで事が変わってくるのなら尚更。


「あ、そうそう」


状況に似つかわしくない明るい声。軽々しく発言されたのは、私の判断を大きく揺るがした。


「君の旦那様には話はついてるよ」


え？旦那様、悠仁の声が右から左へ。話は付いているということは旦那様はこの取引に了承している。心臓が震える。喉が歓喜か恐怖か、混じり合った感情のまま音を発した。


「その取引、受けます」
「よし、それじゃあ二人とも今日中に荷物まとめておいで」
「どっかに行くの？」


「東京」


呪術師がエレベーターから出てきた。



東京都立呪術高等専門学校。

私たちはそこに通うらしい。不安が無いとは言い切れない。呪術師は相変わらずあまり好きじゃない。でも、私の近く、悠仁の中に旦那様がいるなら何処にでも、地獄でも付いてってやる。旦那様に会えるなら地獄でも天国だ。

結構短気→←知ってるよ、そんなこと。

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