前世は両面宿儺の妻だった。【呪術廻戦】

知ってるよ、そんなこと。 ページ15

呪術師と話していたトーンと一段下がって、五条が問う。口元に浮かべられていた笑みは消え去り、目隠しの下の瞳も笑ってはいないだろう。がっちりホールドされた体は私の力では抜け出せない。抜け出せたとして、気を失っている悠仁も連れて逃げるのは土台無理な話だ。下手な返答をしたら殺されそうな雰囲気が漂う。


……これだから呪術師は好きじゃない。


「私、呪術師があんまり好きじゃないの」
「まるで昔から苦手だったみたいな言い方だね。昔から、ねぇ」
「苦手じゃない。どっちかといえば嫌い」


だって、私と旦那様を引き離したもの。これは言葉にしないでおく。要らんことをベラベラ喋るつもりはない。


「両面宿儺の事も私の事も、私は喋るつもりはない。降ろして」
「君のお願いを聞いてもらえる立場だと思ってるの？君も悠仁と一緒に来てもらうよ」
「は？ちょっと、何処に」
「何処にって？」


勿論、地獄さ。


五条が笑う。やられたって思ったってもう遅い。トン、五条の指が私の額に押し当てられ___暗転。




「A、起きろ」
「ん、」


瞼を開けたら視界には悠仁のドアップ。思わず悠仁の顔に手を伸ばした。眠気なんて吹っ飛んで、ただひたすらに悠仁の体温を感じた。目元、傷跡になっている皮膚をなぞって昨日のことが夢でない事を理解した。


「くすぐったいぞ」
「ゆうじ。怪我は、痛いところは？」
「どこにもないって。大丈夫だから」


悠仁の手が私の頭を撫でる。その感覚に安心して、気が緩む。


「調子はどう？A」


緩んだ気が一瞬で張り詰められた。突然聞こえた声は私の隣、五条から発せられていた。


「……最悪」
「そっかそっか。調子良さそうで何よりだよ」


どこがだよ、言葉を飲み込む。私と悠仁、それと五条はベンチに並んで座っていたようだ。私は悠仁にもたれ掛かって寝ていたことも把握。その隣に五条。男二人に挟まれて寝ていた私はどんな風に見られていたのだろうか。


「起きがけに悪いけど、君も起きたし火葬場に行くよ」


火葬場。あぁ、爺ちゃんとお別れしてない。向かう途中、悠仁と手を繋いだ。暖かかった。なんだか涙が出そうになって誤魔化すようにぎゅっと手を握りしめた。悠仁もそれに返した。



・


二人で骨上げを行う。五条は私達の近くで、じっと様子を見ていた。悠仁は五条と喋る。あぁ、悲しい。やっぱり悠仁の中に旦那様はいるらしい。悠仁が死ねば、旦那様も死ぬ。やだな、悠仁にだけは言葉にされたくなかった。

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