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ふわり、ふわり。あ、向こうから君が呼んでる。待って、すぐに行くから。え?なんて叫んでるの?そんな君も美しいね。
「起きて!」
肩を揺すられて、頭が覚醒する。君の顔が思ったより近くにあって、びっくり。外は真っ暗で、どうやら私はあの後、眠ってしまったようだ。肩にはブランケットがかけられていて、良い匂いがする。
「あ、えっと、ゴメン。すぐ帰るね。ご飯美味しかった」
急いで立ち上がる。学ランボーイはもういない。もう遅いから帰ったのだろう。大変だ、好きな人に寝顔を見られてしまった。恥ずかしい。迷惑もかけて、穴があったら入りたい。そそくさと玄関に向かう。おお、君も玄関まで送ってくれるのか。優しい。……ん?なんで君も靴を履いてるんだろ。コンビニでも行くのかな、こんな時間は危険だと思うが。
「ねぇ、愛しの君」
「何」
「こんな時間にコンビニに行くのは危険だと思うよ。君は美しいから、変な人に狙われちゃう」
「……それ本気で言ってるの?」
私より先に靴を履き終わった君は玄関の扉に手をかける。私を待ってくれているようだ。私は紐ぐつはいちいち紐をといて脱ぎはきする派だから、結構時間がかかる。時間がかかると思っても癖付くとやめられないものだ。
「駅まで送るから、行くよ」
「え、いいよ!私、体は頑丈だから。君の方が心配。道暗いよ?」
「はーー。なんで僕の心配ばっかりするんだよ。いい?君は女の子で僕は男。どっちが暗い道で危ないかなんて一目瞭然だよ」
「でも、君は綺麗だから」
はぁ、君はため息をついて、先へ進む。私もついて行かない訳には行かず、駅への道を一緒に辿った。暗い中の灯りに照らされる君も美しい。暗い中の君は陽の下にいる君と違った雰囲気があって、これもまた良い。
「君はさ、僕のことを綺麗とか言うけど、僕は別に綺麗でもなんでもないよ」
ぽつり、君が零した。暑い空気に溶け込むように君の表情は暗い。そんな顔も綺麗だ。誰がなんと言おうと、君は綺麗なのに、どうしてそんな悲しい顔をするの。強く、言葉を返した。
「君は綺麗だよ。初めて会った時から、今までも、ずっとこの先も、君は綺麗」
「そんなんじゃ…」
「綺麗だよ」
君がその言葉を否定するなら、しなくなるまで言い続けてやる。君が自分の事を嫌いなら、私が君の分まで君を愛する。肯定する。君がいらないと捨てた感情でも、私が拾って大切にするから。笑ってよ。
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薆 - もう最高すぎです。読んでて胸がいっぱいいっぱいで、自分に重ねてしまいました。言葉選びも胸に刺さります。泣きそうでしたが、書いてあった「人工呼吸」を聴いて号泣しました笑 (2021年3月28日 16時) (レス) id: 5a8be2f728 (このIDを非表示/違反報告)
海夜海月 - 最高です。泣きかけました。これからも頑張ってください。 (2021年3月24日 1時) (レス) id: 6a4cb75c85 (このIDを非表示/違反報告)
エタニティ(プロフ) - 一気に全部読んじゃいました。この作品に出会えて幸せです! (2021年2月23日 15時) (レス) id: 5dea0f434c (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年1月21日 23時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 最高です! (2021年1月19日 0時) (レス) id: b3889a91c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月16日 21時