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セミもへばるほど、暑い夏の日。今日も今日とて駅で君の姿を探す。黒い髪の、君の姿を。



あ、いた。



「おはよう!愛しの君。今日もいい朝だね。好きだよ」
「……なんでいるの」
「勿論、好きなのは朝じゃなくて君だから」
「話聞いてないよね」



そんなまさか、他の誰でもない君が吐いた言葉だ。一語一句聞き逃さず、耳をすませている。ただ、何が好きかを誤解されたくなかっただけで。



ため息をついて、君はスタスタと歩みを速める。学校にやり忘れた宿題でもあるのだろうか。おっちょこちょいだなー愛しの君は。



「なんでついてくるの」
「一緒に登校したくて」
「学校違うと思うけど」
「私の学校と同じ道だから」
「その制服、真反対の学校だよね」



あら、バレちゃった。まあ、学校が真反対かなんて些細な事だ。私は君と同じ時間を共有したい。君と同じ空気を吸いたいだけなんだ。



「ねーねー愛しの君。好きだよ」
「……はいはい」



!!!、返してくれた。その心底面倒くさそうな顔もカッコいいね。顔を半分覆う髪もミステリアス。思わずスマホを構えて撮影しようとしたが、取り押さえられた。無念。



初めて告白した頃と比べると、愛しの君は随分私に慣れたようだ。真っ赤にそまった顔を見れたのは最初の一、二回だけ。今では眉一つ動かさず、返事も適当になってきた。くそう、撮っておけばよかった。真っ赤な顔のレアショット。



ピタ、君が止まった。前には道に広がって歩くグループ。なんだアイツら、退かしてこようか。愛しの君が通れないだろ。



「君はもう帰って」
「え、校門まで送るよ」
「良いから!」



グイっ背中を押された。固い声、私と一緒にいる所を見られるのがのが嫌だったのだろうか。それとも、アイツらが嫌だったのだろうか。君が悲しむ原因を全て取り除きたい。でも、今の君はそんなこと望んでないのだろう。仕方がない、諦めて私も学校へ行こう。



「うん、じゃあね。また会いに来るから、ずっと好きだよ」



返事はしてくれなかった。君は背中まで美しいな。君の瞳を曇らせる学校なんてなくなればいいのに。転校したい。そうしたら、君を一から百まで守ってあげるから、なんて。



後ろ姿に、そっとエールを送った。

の→



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設定タグ:呪術廻戦 , 吉野順平   
作品ジャンル:恋愛
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- もう最高すぎです。読んでて胸がいっぱいいっぱいで、自分に重ねてしまいました。言葉選びも胸に刺さります。泣きそうでしたが、書いてあった「人工呼吸」を聴いて号泣しました笑 (2021年3月28日 16時) (レス) id: 5a8be2f728 (このIDを非表示/違反報告)
海夜海月 - 最高です。泣きかけました。これからも頑張ってください。 (2021年3月24日 1時) (レス) id: 6a4cb75c85 (このIDを非表示/違反報告)
エタニティ(プロフ) - 一気に全部読んじゃいました。この作品に出会えて幸せです! (2021年2月23日 15時) (レス) id: 5dea0f434c (このIDを非表示/違反報告)
七夏(プロフ) - 面白いです!続きを楽しみに待ってます! (2021年1月21日 23時) (レス) id: 716685a2fc (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 最高です! (2021年1月19日 0時) (レス) id: b3889a91c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2021年1月16日 21時

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