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「
「ん?」
何故そう云われているのかと答えを求めて国木田さんを見つめると、国木田さんは何処か必死そうな声色で答える。
「それとも、俺は恋愛対象として見れないか?」
「え?」
"恋愛対象"?
その四文字が頭をぐるぐると回る。
そもそも、恋愛というものすら、私には分からないというのに。
友人や仲間という意味の好きと何が違うのか、どんな感情を抱けば好きだということになるのか。
当然、体験した事の無いことは分からない。
恋愛という言葉の意味自体は知っているが、それだけだ。
だが、それが何故今出てくるのか。
「Aの前だから、こうも簡単に気が緩んで、気がついたら笑ってるんだ。一挙一動に心が揺さぶられるのも、もっと傍に居たいと思うのも、お前だからだ」
「・・・・・・今の言葉が、どういう事か考えておけ」
国木田さんは背けていた顔を此方に向けて、真っ赤になった顔で真っ直ぐに私を見つめる。
どちらのものか分からない心臓が血を送り出す騒がしい音が、耳を侵食していった。
私、だから・・・・・・。
だが、もし、もしも。
国木田さんが私の事を、好きで居てくれていたとしても、今の私には答えを出す術が無いのだ。
恋愛に関しては赤子同然の私には、自分が恋愛感情というものを持っているのかさえ分からないのだから。
そもそも、私が誰かから好かれる事になるとは、思ってもみなかった。
好かれることは嬉しい事だが、現実味を感じる事が出来ずに、まだ夢の中に居るかのような不思議な心地がしている。
だが、このままでは国木田さんに対して不誠実過ぎる。
取り敢えず国木田さんの正しい答えを貰おうと、口を開く。
こんなにも、言葉を発する事に対して緊張したことはない。
「く、国木田さん。間違いなら、忘れてくれ。それは」
——『私の事が、好きだという事であってるか?』
そう云おうとしたところで、医務室の扉がガチャりと音を立てた。
「っ!」
二人して、肩を跳ねさせて医務室の扉を見つめる。
扉を開いたのは、与謝野さんだった。
「おや?A、目が覚めたんだね。体調は大丈夫かい?」
「あ、あぁ」
明らかに異様な雰囲気が漂っていたのだが、与謝野さんはそれに対して何も聞くこと無く、普通通りに会話を続ける。
気遣いを感じて非常に有難い。
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風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます!面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください! (2022年9月18日 20時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました!とても面白かったです!私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました(笑)更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年9月7日 0時