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・(中也さん視点) ページ24

「おかえり」
「ただいま」
「その、昨日は作って貰ったからな。今日は私がご飯を作ってみた。簡単なものしかないが」

そう云うAは少し照れ臭そうにしている。
お返しに何かをするところがAの律儀さを表していて、思わず笑みが溢れた。

Aは珈琲を二人分運んでくると席に着く。
その際にふわりと爽やかなシャンプーの匂いもして、気になった事を尋ねてみた。

「風呂に入ったばっかなのか?」
「まぁ、そうだ。家に居て何もしないと躰が鈍るから、部屋で運動してたら汗をかいてな。流石に其の(まま)は駄目だろうと」

確かにそれは大事だ。
仕事的に戦闘の機会は多いとはいえ、今は部屋に篭りっきりなのだから、動いておかなければいざという時に苦労する。

「だからAも朝飯食うのが遅ェんだな」
「否、これは単純に中也さんと食べたかったからだが」

さらりと返ってきた答えにへぇ、と相槌(あいづち)を打ちかけて動きが固まる。
期待するような事を平気で云うのだ、目の前の奴は。

——Aの事を好きな奴は苦労すんだろうなァ、俺みてェに。

そんなの、自分一人で十分だが。

「先に食ってても良かったんだぜ?」
「一人でご飯を食べるより、二人で食べた方が楽しいだろう」

Aはちらりと俺の方をみて首を傾げる。
それもそうだと肯定の意を示すと、目の前の料理や珈琲から湯気が上っていく様子に、冷めていくのが勿体なくて、俺も箸を手に取る。

形はまだ慣れないのか歪なところもあったが、食べてみると美味しくて優しい味がした。
こんな時間がずっと続けば良いんだがなァ。

そんな事を思いながらAを見つめていると、Aが何か変な味がしたのかと慌て始める。

「美味ェよ。結構料理出来るんだな」

その表情に出ないのに案外分かりやすい感情表現に、少し笑い混じりに褒めると、次の瞬間Aは珍しく嬉しそうに微笑んだ。

「良かった。国木田さんに教わったんだ——」

胸が軋んで、そこから先の言葉を聞かないようにする。
探偵社の奴らの中に、確かそんな名前の男が居た筈だ。
嬉しそうなAの言葉を止めるのは忍びないが、やはり別の男の話をされると少なからず嫉妬心は覚える。

もやもやとしていたものが形となってしまった。

好きになってしまったのだ、本来敵である筈の探偵社の人間を。
今目の前に居るAを。
そうでなければ、わざわざ敵組織であるAを飲みに誘ったり、助けようとしたりしない。

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風と衣(プロフ) - もなかさん» もなか様ありがとうございます!面白いと言って貰えて今とてもニヤニヤしております(笑)今回のオリジナル展開でも中原さんの活躍が出てきますので、どうぞお待ちください! (2022年9月18日 20時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
もなか - 作品拝啓させていただきました!とても面白かったです!私は中原さん推しなので夢主ちゃんとの絡みの話はニヤニヤしちゃいました(笑)更新楽しみにしています (2022年9月18日 17時) (レス) id: bae08d35f3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年9月7日 0時

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