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「面倒事に巻き込んで済まない」

改まって頭を下げると、皆は驚いたように固まったが、暫くして穏やかな空気が流れた。

「まぁ、ああいうのは日常茶飯事だからねぇ」

与謝野さんが気にしなくて良い、と背中をたたく。

「だけど、あの男は誰なんだい?」
「・・・・・・ちゃんと話す。私の過去の話、聞いてくれるか」

私は腹を括った。
今まで何があったのか、私が何をしてきたのかを全て話す。
幸いにも皆、時間を空けてくれたらしく、テーブルの周りで顔を向かい合わせた。

「——」

静かな中、一人口を開く。
膝で拳を握り、頭にこびり付いて離れない記憶を吐き出していった。

──────

全て話終えると、やっと心に居座っていた重たい岩が砕けたかのような開放感に包まれる。
初めて自分の話をこんなに長々とした。

「お姉さんも師匠さんも失ってから、ずっと一人で彷徨っていた・・・・・・」

敦くんが夕焼けのような瞳を揺らして呟く。
その表情は、初めて敦くんと出会った時に見せた暗い表情と重なった。

「そんな顔しなくていい。知らない事、知らない景色、沢山の発見があった。優しい人も居たし、悪いものじゃなかった、大丈夫だ」

前のように敦くんの頬を引っ張ると、敦くんは余計に泣きそうになる。
何故か悪化した。

「敦くん?何か、悪いことを云ってしまったか?」
「違いますよ。(ただ)、そう云いながらもAさんは淋しそうな目をしているからです!思えば、初対面の時から貴女はそうだった」

敦くんの綺麗な瞳には前よりも力が(こも)っていて、それでいて優しい雰囲気がある。
出会った頃の弱気そうな瞳とは変わっていて、敦くんも少しずつ成長してきているのだと実感した。

「どれだけ良い人や物事に出会えたとしても、その二人はAさんにとって唯一なんでしょう?淋しいんでしょう?だから、大丈夫だなんて自分で云い聞かせなくて良いんです」
「云い聞かせているように、見えるか?」
「そう見えてます」

心が一際大きく揺れ動く。

大丈夫——そんな言葉で誤魔化して、内心を見ないフリしているだけ、だった?

(いや)、それがきっと正しいのだ。
前に進む為には、傷の痛みだって我慢しなければ。
いちいち止まっていては、いつまで経っても前に進めないのだから。

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作品ジャンル:恋愛
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風と衣(プロフ) - Rio*さん» ありがとうございますm(_ _)mゆっくりと休ませて頂きます!今コロナ感染も多くなっておりますので、この時期の体調の変化にはお気を付け下さい!コメントは励みになるので、嬉しかったです(*^^*) (2022年7月14日 9時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
Rio*(プロフ) - しっかり休んでくださいね😢ご自分のペースで更新頑張ってください!! (2022年7月14日 0時) (レス) id: 31d091d700 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年7月10日 0時

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