未だ絡みつく毒 ページ39
「初めまして探偵社の皆さん〜!ちょっと探し人が居るんですよねぇ〜!」
眩しい日差しが差し込む昼下がり。
猫が
扉を雑に扱う者が多く、可哀想な扉は下部の金具が外れてブラブラと揺れる。
何事かと社に居た全員が扉の方を見ると、にこにこと笑顔の男が一人。
その男は我が物顔で社内にずかずかと入ると、興味深そうに周りを観察し始める。
そのあまりに異様な言動に社員達が臨戦態勢に入ると、男は両手を上げて気の抜けた声で笑った。
「あはは〜、そんなに警戒しないで下さいよ〜。寿命が縮みますって」
男はすぐ近くに居た谷崎の前に立つと手を差し出す。
「せっかくなんで、親交を深める為の握手を」
「え?」
谷崎が迷いながらも手を出そうとすると、慌てたような足音が響き、男と谷崎の間を短刀が飛んで行った。
「ひっ」
「・・・・・・奴に触ったら毒を食らうぞ」
短刀が飛んで来た方を見ると、Aが肩で息をしながら男を睨んでいる。
「わぁ、三年ぶりだね、Aちゃん♪」
そして上機嫌で笑い始める男と反比例して、Aは不機嫌そうに眉を顰めた。
社内の空気が氷のように冷え、鋭く突き刺すような殺気が走る。
社員達はAの普段からは考えられない態度と殺気、そしてそれを前にニコニコと笑っている男の異様さに
──────
何故、何故
何故教えた覚えもない名前まで知られている。
頭の中を巡るのは、何故という単語のみ。
そんな混乱の中でも、怒りだけは確かな形を持って表面に現れた。
痛い程の殺気と、静寂。
ああ、やってしまった。
そう頭の隅を過ぎるも、感情に押し込まれてしまった理性は働いてくれなかった。
「これが見たかったんだ。全く、素晴らしいね〜」
声の主は、壊れた人形のように笑みを浮かべる——かつて相打ちになりかけた毒の男。
翠の髪が揺れる度、頭の中で過去の景色が鮮明に映し出される。
「迎えに来たよ〜」
「帰れ」
短く拒絶すると、男はわざとらしく驚いたような顔をして首を傾げる。
「怒ってる〜?」
云うまでも無いだろう。
無言で睨みつけると、男は今度は可笑しそうに笑みを貼り付けた。
「あぁ、君を一度殺したから?」
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風と衣(プロフ) - Rio*さん» ありがとうございますm(_ _)mゆっくりと休ませて頂きます!今コロナ感染も多くなっておりますので、この時期の体調の変化にはお気を付け下さい!コメントは励みになるので、嬉しかったです(*^^*) (2022年7月14日 9時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
Rio*(プロフ) - しっかり休んでくださいね😢ご自分のペースで更新頑張ってください!! (2022年7月14日 0時) (レス) id: 31d091d700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年7月10日 0時