・(過去編) ページ21
——何故そんな目を向けるのだ。初対面の筈なのに。
Aが目を逸らせずに居ると、男は誤魔化すように笑みを浮かべて静かにAから離れた。
「あははっ、俺の毒で死なない子って初めてだなぁ〜」
満足そうに笑う男の動きに合わせて、闇と対照的な色をした白衣が揺れる。
Aは、丁度師匠が外出してしまったタイミングでこの男に唐突に切り掛かられた挙句、着いてこいと誘われていた。
十中十の確率で利用される。
そもそも引き込みたいなら何故切り掛かったのか、Aには理解が出来なかった。
じりじりと
頭がぐらぐらとする感覚にAは顔を顰めた。
この不審な男の厄介な異能とは、触れた人間を毒で侵すというものだった。
その上服越しに触れていようと、刀越しだろうと毒は回っていく。
長期戦を考え、『星夜の切願』でこれ以上毒の異能を食らわないようにしたのは良いものの、一度受けた毒は躰を確かに蝕んでいた。
銀の線が煌めく。
刀が振られる度に皮膚すれすれを走る線は流れ星のようで、あぁ綺麗だなと、そんな状況では無いにも関わらず見惚れる程である。
Aはその刀を避けながらも、この男の強さに息を飲んだ。
─────
耳をつんざく銃声が響き、銃口から硝煙が上る。
師匠の握った銃から放たれた音は、置いてきたAには届く事無く空気と混ざりあって消えた。
聞いているのは師匠以外に一人。
たった今弾丸を避け、懐から銃を取り出した男だ。
「悪いね。駒でも駒らしく生きてるんだ。大人しく帰れる筈が無いのさ。貴方は分かってくれるよね?」
耳を突き刺す銃による爆発音。
だが鳴り響く銃声は、圧倒的な実力差によってすぐに途切れた。
「目的を答えろ」
男に銃口を突き付けた師匠は冷たい声で男を睨む。
師匠は帰宅途中、男によって足止めを食らっていたのだ。
「無視は酷いな。面倒くさいからやだ」
その男は死への恐怖が無いのか、平然としている様子に、師匠は舌打ちをして眉間の皺を深めた。
「怖い怖い。小心者に対して舌打ちは止めて欲しいよ」
「・・・・・・何か、お前誰かに似てるな」
肩を竦める男に、師匠ははっとしたように目を見開く。
髪色も言葉使いも違うが、時折見せる仕草や笑い方が、師匠の記憶の中の人間を彷彿とさせていた。
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風と衣(プロフ) - Rio*さん» ありがとうございますm(_ _)mゆっくりと休ませて頂きます!今コロナ感染も多くなっておりますので、この時期の体調の変化にはお気を付け下さい!コメントは励みになるので、嬉しかったです(*^^*) (2022年7月14日 9時) (レス) id: 11e2fd2044 (このIDを非表示/違反報告)
Rio*(プロフ) - しっかり休んでくださいね😢ご自分のペースで更新頑張ってください!! (2022年7月14日 0時) (レス) id: 31d091d700 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風と衣 | 作成日時:2022年7月10日 0時