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「広く使おう」
降りてきた宿儺が、放心状態の伏黒の横腹を掴み空へ放り投げる。
我に返った水巫が宿儺の方を向いて構えるが、時すでに遅し。
眼前に迫った宿儺は口角を上げて、水巫の耳元で囁いた。
「先刻も言ったがお前は殺さん。
_____だが今は邪魔だ」
「ッ!!!」
次の瞬間、水巫の腹に虎杖の脚がめり込む。彼女の口から空気が漏れた。
その勢いは止まらず、林に並ぶ木をいくつも薙ぎ倒した。
ようやく何十本目かの木で止まることができたが、一日に二度も重い打撃を喰らえばどうなるのか。これは素人でも分かることだった。
「(やばいやばいやばい…!)」
先程の特級の時とは比にならないほどの血が溢れ出す。
回復した細胞が再び裂かれただけでなく、さらにその裂け目が広がったのだ。
失血が酷く、くらくらする水巫。
だがしかし、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
あのままもし、虎杖が帰ってこなければ伏黒は死ぬ。
伏黒は、自分の助けた人間が誰かを殺すことを恐れた。
それでもなお、伏黒は虎杖という男を助けたのだ。
だと言うのに、今、虎杖の中に巣食う悪がそれを実現させようとしている。
「私に、友人として、できること………」
水巫は軋む身体に鞭打ってある場所へと急ぐ。
林を抜けた先に二人はいなかった。けれども、一番最初に宿儺が捨てたアレはまだあった。
水巫は固唾を呑む。
迷ったのだ。
こんなことをすれば、せっかくできた友人に捨てられるだけでなく、人として最低な人間に身を落とすだろう。
「それでも、これはもっと止めなくちゃいけない…!」
水巫は弱々しく脈打つ心臓を手に取る。
手の上で動くそれはまだ温かく、殺さないで、と訴えかけてる様だった。
けれども、もう覚悟は決めたのだ。
水巫は右手で水の刃を作り出す。
「_____悠仁。貴方を信じてあげられなくてごめん」
そしてそのまま、その命の灯火を、消火した。
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佐藤れい(プロフ) - 林檎さん» 感想ありがとうございます…! とても嬉しいです、まだ明かされていないことも多くてむず痒い点もあると思いますが、それも込みで今後も楽しんでいただけると嬉しいです! これからもよろしくお願いします! (2020年11月28日 10時) (レス) id: 4f8cc240de (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - こんな夢主ちゃん待ってました。すごく面白いです。シリアスが儚い雰囲気の夢主ちゃんにぴったりで素敵です。更新頑張って下さい、応援してます。 (2020年11月28日 0時) (レス) id: 67c87e380d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐藤れい | 作成日時:2020年11月22日 18時