第七話 ページ7
次の日。
時透の他に隊士もいないため、Aは比較的のんびりと一日を過ごしていた。
(時透様………。)
何となく話しかけづらいような、掴みどころのないような彼。
(最初は怖かったけど、助けてくれたし、何だかんだ優しい………のかな?)
Aはあの日の、風に舞った長い髪と浅葱色の瞳を思い出す。
(あとやっぱり綺麗………。怖いけど。)
そんなことを考えて廊下を歩いていると、縁側に時透の姿があった。
突然の本人登場に、一瞬立ち止まる。
柔らかな光を受けた彼の瞳が、美しく煌めいた。
さわさわと髪が風に揺れる。
声をかけようとしたところで、Aはふと思い立って台所に向かった。
(お茶とお菓子、お持ちしよう。確かお
Aが温かいお茶と饅頭を盆に乗せて縁側に戻ると、時透は先程と同じ体勢で座っていた。
「時透様。」
声をかけると、彼は少しだけ顔を上げる。
「今日は良いお天気ですね。暖かい。」
彼の隣に腰を下ろし、お茶とお菓子を手渡した。
「このお饅頭、美味しいんですよ。苦手じゃなければ召し上がってください、時透様。」
一方的に話すAを、時透は饅頭を受け取りながら見ていた。
「Aは何で、僕のこと時透様って呼ぶの?」
同じ年でしょ、と続ける時透。
その言葉に、Aはきっぱりと答えた。
「それはだって、時透様はお客様なので。」
この家に来ている隊士たちは、例え年下だろうと礼遇するべきお客様。
Aにとって彼らは、自らの命を懸けて人々を守ろうとする、尊い人たちだった。
「そう。」
時透は聞いて何をするでもなく、一口お茶をすする。
お世辞にも会話が弾むとは言いがたい時透との話。
けれどAは、ただお茶を飲んでいるだけのこの時間が割と好きだと思った。
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作者名:夢見草 | 作成日時:2021年1月2日 15時