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夜。闇と化した山の中。




"それ"は、私の目の前にいた。




にやりと楽しそうに(わら)い、爪の先から滴る血を舌で舐め取るその化け物は、人形(ひとがた)であるが人ではない。






"人喰い鬼"





私の家に代々伝わる伝承。





裂かれた腕から血が止めどなく流れ、小さな血溜りを作り始める。




私はそれをただ茫然と見つめ、地に座り込んでいた。




このまま意識を手放してしまえばどんなに楽だろうか。




そんな都合の良いことは、起きないけれど。






自分に伸ばされる人喰い鬼の長い爪に、私は" 死 ぬ "のだと直感した、







その瞬間。






鬼の頸が、吹き飛んでいた。







何が起こったのかわからないまま、ただ私は、




風に髪を揺らす彼の姿がひどく綺麗だったことは、今でも覚えている。









これは、私の美しい記憶。




私と彼との、短い物語。執筆状態:完結

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作者名:夢見草 | 作成日時:2021年1月2日 15時

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