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第五話 ページ5

「A、いないの?」





自分を呼ぶ母の声に、Aは現実に引き戻される。




台所からAを呼んでいた母は、Aを見るとにっこり微笑んだ。





「時透様の具合はどう? 完治していないみたいだったから気になって。」



「時透様は大丈夫だと仰っていたけれど………。」




あの日の夜のことについて、父母はAのことを一切責めなかった。




時透に何度もお礼を言うだけで、怒ることをしない。




母はむしろ、買い出しを頼んだ自分に責任があると泣いていた。




(もう絶対、夜に外なんて出ないから。ごめんなさい、お父さん、お母さん。)




「でも骨に(ひび)が入っているかもってお医者様は………。手のひらの傷も酷いし心配だわ。」





自身の子どもを気にかけるような口調で、母が言う。




その言葉で、回想に飛んでいたAはまたもハッとし、そうだねと返した。




「後でまたお薬と包帯を持っていかないと。」




あの日街まで行って買った薬品類を棚から取り出して、Aは母にそう言った。

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作者名:夢見草 | 作成日時:2021年1月2日 15時

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