第十六話 ページ16
そうして庭に下りた二人。
紙飛行機など折ったこともなければ飛ばしたこともないAは、興味津々で時透を見つめていた。
「いくよ。」
時透がAを振り返って言う。
穏やかな風が、彼の髪を優しく揺らしていた。
時透はそのまま腕を引き、真っ直ぐ空へと、突き上げるようにのばした。
(わ、)
その手にあった紙飛行機が、空に吸い込まれるように飛んでいく。
今日の空と同じ色をした飛行機が、遠く遠く、彼方へ飛んでいく。
やがて青空へ溶けるように消えたそれに、Aは歓声を上げた。
「すごいっ! あんなに飛ぶものなんですね!」
子どものようにはしゃいで笑うAに、時透は大げさだと言いたげに微笑んだ。
「Aも作れるよ。」
「本当?」
「うん。」
簡単だよ、と言う時透。
「さっき鶴折ろうとしたらこうなったんですけど、私にもできますか?」
「……………。」
鶴の面影すらない紙くずを差し出されて、時透は軽く困惑する。
Aは絶望的に不器用だった
「…………教えてあげる。」
「ありがとうございます!」
諦めたように言う時透に、無邪気に笑うA。
折り紙を手に取って眺めるAを見て、仕方ないなぁと時透は苦笑する。
Aを見つめる彼の目は、どこまでも優しかった。
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「わーっ! 破れた!」
「それで53枚目なんだけど。どうやったらそうなるの。」
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作者名:夢見草 | 作成日時:2021年1月2日 15時