第一話 ページ1
「失礼致します、時透様。」
少女はそう言って襖を開け、食事を載せた盆を座卓に置いた。
「お食事です。」
柔らかく微笑む少女に、少年は少しだけ視線をやる。
「ああ、えっと、誰だっけ……。」
「
何度目かのこのやり取りをして、Aという少女は部屋を出る。
そしてAは、ついこの間のことを思い出していた。
-
「鬼狩り様………?」
Aが掠れた声で呟くと、それが聞こえたのか否か、彼が長い髪の隙間からAに目線をやった。
浅葱色の瞳と、目が合う。
「………ここで待ってて。」
「え?」
少年は静かな声で言うと、暗い山の奥へと歩いていった。
(待ってて………?)
何故だかわからないまま、言われた通りにAはその場に座り込んだ。
空は相変わらず怖いほどに綺麗で、見つめていると吸い込まれそうなほどに星が瞬いている。
(待つってどのくらい、)
「ねぇ。」
突然声を掛けられ、驚いて肩が跳ね上がる。
顔を上げると、鞘に刀を仕舞った少年がただ無表情にAを見ていた。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夢見草 | 作成日時:2021年1月2日 15時