歌.い手引退宣言出来ない件(白目)【歌.い手】

＊28話 ページ28

「あ、声出ししといてね。」

そう言うなり彼方さんは簡単な声出しを始めた。

声が綺麗で聞き惚れてしまう…

私は声出しに１曲歌うことにした。



その曲は、シャルル。

私の、初投稿の曲。



.



.



.



ぱちぱち、と乾いた音が部屋に響いた。

驚いて顔を上げると、彼方さんと目が合った。


『そっか、』

歌うことに夢中で彼方さんが居た事を忘れていた。


「凄い、綺麗だった。」

『へへ、ありがとう。』


彼方さんに凄い、凄いと言ってもらえて、嬉しかった。



「変わったよね。」

『…え？』

「初投稿の時と。」

『…ああ。』

おそらく彼方さんは、感情のこめ方が変わったと言いたいのだ。

私の初投稿は2年前。
ちょうど彼氏と別れた頃。

だから、シャルルという失恋ソングに感情移入出来た。

だけどそれから２年も経っているし、
私もそこまで引きずる人でもないため、
感情移入しづらい。

そこが違和感だったのだろう。
ま、初投稿は感情移入しすぎだったけど。

ぶっちゃけ別れを切り出したのは私だし、
引きずりすぎるのはかっこ悪いでしょ。


それに、


『よし、歌うか。』

今はこの歌に集中しないと。

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