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No.09 ページ9

「アホウかー、おマエら!」


突然、上から何者かの声が降ってきた。

そして、どすん!とその声の主が落ちてきた。

そいつはいてててて…と腰を擦りながりゆっくりと立ち上がった。

雛の顔が真っ青になった。

恐怖か何かで唇が歪む。

貴はちょっとさっきの「あれ」を見られたのでは、という思いが
こいつ不審者やん、という気持ちに勝ってしまい、思わずそいつを睨み付けた。


「おい、お前何だよ」

「何だとは失礼なー!わたしは雛の協力者なのー!」


貴はじたばたと暴れるそいつを羽交い締めにして、怒鳴り付けた。

しかし、協力者、という言葉で一瞬気を緩めてしまい、
彼の腕からするりと抜け出されてしまった。


「わたしは見てたよ!ずっと、ずっとずっと、3年間!
1日1食しかご飯を与えなかった誰かさんの代わりにひよっこちゃんに
ご飯を食べさせたり、その服をひっそーりと調達したり、
ちょっと埃っぽいけど月に1回ぐらいは夜の間に掃除したり、
雛の身体を湿らせたタオルで拭いて清潔に保ったり、
貴の下着毎日替えて洗ったりしてたのに!」

「凄く早口な上にしれっと触られてた」


早口でまくし立てたそいつは、女子だった。

胸は雛とは違い豊満で、独特の色っぽさの様なものを感じる。

彼女もまた、2人と同じ型で紫のジャンプスーツを着ていた。

しかしジャンプスーツはあちこちにファスナーが付いており、
袖やらを脱着出来る様だ。

髪は赤髪でポニーテール、頭に綺麗な赤色のバンダナを巻いている。


「楓(ふう)…ごめんね、忘れてた」

「ううん、ぜーんぜん!わたしは平気だよ!」

「ひよが記憶を無くしてた間の町の事、教えてくれる?」

「もっちろんさー!雛はわたしの大事なトモダチだからねー!」


雛は少し微笑んで楓の手を握った。

雛、友達多いなー、と貴は突っ立ちながら思った。

貴には、学校に友達が居なかった。
小学校まではクラスの中心人物で居る位だったのに。


「トモダチなんか、イらないよね」


貴の口から自然にそんな言葉が飛び出していた。

憎悪の感情が、貴の心に満ち、蝕み始めた。

歯軋りが止まらなくなる。目の前の2人を切り殺したくなる。

固く握り締めた拳を、まずは楓から、と降り下ろそうとした瞬間、
首元に冷たい痛みが走った。


「僕は徳を積んだんですよ、実は。
だから、人の精神を落ち着かせるなんて、簡単なんです」


いつの間にか眼を覚ました聖が貴の首元に触れていた。


助かった。

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作者名:赫赤(かくせき) x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年2月9日 21時

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