No.12 ページ12
「センパイっ」
ぱちり、と眼を開く。
ぼんやり明るいクリーム色の天井が眼の前にあった。
貴と雛はほぼ同時に起き上がり声の主の方を見た。
聖は虚ろな眼をしていた。
2人は顔を見合わせ、ため息を吐いた。
貴の髪はボブカットに綺麗に切り揃えられ、
雛の髪も男子と見間違える程度の短髪になっていた。
貴は鞄に入っていた櫛で髪をとかした。
「まさかこういう事になるとはね」
さらさらの髪を櫛が滑っていく。
シャンプーを使ったのだろうか、仄かに甘い花の匂いがする。
「聖くん、」
雛はそこではっとして口をつぐむ。
聖はぼぉっと突っ立っており、眼だけをふらふらとさまよわせていた。
「センパイ、センパイ、何処行っちゃったんですかぁ」
「聖、お前のセンパイはこいつだぞ」
貴が髪を直しながら雛の背をぐいと押す。
うわ、と雛は前によろめき、聖の肩を掴んだ。
雛は転ぶ事は無いだろう、と思ったが、
彼は不機嫌そうな顔で雛の手を払い除けた。
「僕の肩は雛センパイ以外には触らせません」
雛はまた前に大きくよろめき、今度は倒れてしまった。
靴を入れる棚に強く頭をぶつけてしまったので、何だかふわふわと心地が良い。
雛はそのまま狭い玄関に横になった。
貴は助ける暇も無かったので、玄関の段差に腰を下ろしていた。
聖の事を彼は信じていたが、髪型が違うだけで。
「まさか、お前。髪型で人を判断しちゃってる」
ついうっかり、貴は口を滑らせてしまった。
聖は貴を見つめた。
彼は元々下がり気味だった眉を更にハの字に曲げて言った。
「センパイ達の区別が着かないんです、タスけて下さい…」
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