検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:2,462 hit

No.12 ページ12

「センパイっ」


ぱちり、と眼を開く。

ぼんやり明るいクリーム色の天井が眼の前にあった。

貴と雛はほぼ同時に起き上がり声の主の方を見た。

聖は虚ろな眼をしていた。

2人は顔を見合わせ、ため息を吐いた。


貴の髪はボブカットに綺麗に切り揃えられ、
雛の髪も男子と見間違える程度の短髪になっていた。

貴は鞄に入っていた櫛で髪をとかした。


「まさかこういう事になるとはね」


さらさらの髪を櫛が滑っていく。

シャンプーを使ったのだろうか、仄かに甘い花の匂いがする。


「聖くん、」


雛はそこではっとして口をつぐむ。

聖はぼぉっと突っ立っており、眼だけをふらふらとさまよわせていた。


「センパイ、センパイ、何処行っちゃったんですかぁ」

「聖、お前のセンパイはこいつだぞ」


貴が髪を直しながら雛の背をぐいと押す。

うわ、と雛は前によろめき、聖の肩を掴んだ。

雛は転ぶ事は無いだろう、と思ったが、
彼は不機嫌そうな顔で雛の手を払い除けた。


「僕の肩は雛センパイ以外には触らせません」


雛はまた前に大きくよろめき、今度は倒れてしまった。

靴を入れる棚に強く頭をぶつけてしまったので、何だかふわふわと心地が良い。

雛はそのまま狭い玄関に横になった。


貴は助ける暇も無かったので、玄関の段差に腰を下ろしていた。

聖の事を彼は信じていたが、髪型が違うだけで。


「まさか、お前。髪型で人を判断しちゃってる」


ついうっかり、貴は口を滑らせてしまった。

聖は貴を見つめた。

彼は元々下がり気味だった眉を更にハの字に曲げて言った。


「センパイ達の区別が着かないんです、タスけて下さい…」

No.13→←No.11



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:ファンタジー , スイサイドリーム , 市販書き , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:赫赤(かくせき) x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年2月9日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。