1人の姫と双つの黒の怪奇譚【文豪ストレイドッグス】-青の時代

・噂・ ページ4

＿＿＿…


鴎外｢私が今年に入ってから何度君の自 殺を阻止したと思ってる？大変なのだよ､あれ｡

一度なんか椅子の下の爆弾を解除するために､映画の主人公みたいな事までしたのだよ？｣


｢…お父さんが治に死なれると困るのは､もし治が死んだ場合まだ根強く残る､先代派から『矢張り首領交代は陰謀だった』と騒ぎ出すことを防ぐためでもあるでしょ｡

私とお母さんだけだと遺言の信憑性が薄くなる｡

だから第三者の治にはそんなに早く死なれると困る｡

死んで貰うにはもっと組織でお父さんの味方が増えて安定して軌道に乗った頃｡

それが一番ベストタイミングのはず｣


美夜｢Aも揶揄うのはやめなさい｣


｢はーい｣


鴎外｢全く､君たちは揃いも揃って…

太宰君｡君がそんなに望むのなら､楽になれる薬を調合してあげてもいい｣



お父さんが机の引き出しから取り出した紙にさらさらと文字を書きつけた｡



太宰｢ほんと？｣


鴎外｢その代わり､ちょっとした調査を頼みたい｡

何､大した仕事じゃあない｡危険もない｡だが君たちにしか頼めない｣


｢…私も含まれているんだ｣


太宰｢うさんくさっ｣


鴎外｢横浜租界の近くにある､擂鉢街は知っているね？その浜辺で最近､ある人物が現れたという噂が流布している｡その噂の真相を調査してきて欲しい｣


美夜｢それは『銀の託宣』と呼ばれる権限委譲書｡これを見せればマフィアの構成員は何でも言う事を聞くから､好きに使うといいわ｣



治は差し出された､『銀の託宣』とお父さんと交互に見た｡



太宰｢ある人物って？｣


鴎外｢中ててご覧｣


太宰｢…考えたくない｣


美夜｢いいから､ね？

ほら､Aも｣


太宰｢…仮にもマフィアの最高権力者とその補佐官様が､街の噂ごときを心配する筈がない｡

それだけ重要な捨て置けない噂ってことだ｣


｢『銀の託宣』を使うほどの噂＿多分重大なのはその人物自体じゃなくて噂そのもの(・・・・・)｣


太宰｢真相を確かめ､発生源を潰しておかなくてはならない噂｡流布するだけで害を為す噂｣


｢優秀な部下達や専門家でもなくて…マフィアではない治と､マフィアだけどそこまで名を残してない私たちを使う理由なら｣


太宰｢たった1人しか有り得ない｡

現れたのは＿＿｣


太宰/A｢先代の首領だね(・・・・・・・)？｣


鴎外｢その通り｣


美夜｢世の中には､墓から起き上がってはならない人が存在する｡

あの人の死は鴎外さんと私で確認して､盛大に弔いもしたんだから｣


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