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白銀 ページ6

「グルル…」

『…あ゛、はっ…これが絶体絶命ね…』


私が地面に座り込んでいるうちにもジリジリと距離を詰めてくるワンちゃん。…やっぱり霧尤の式神だもん、そりゃ敵うわけないよね。

格上相手によくここまで戦ったよね、粘ったよね。


…私、もう十分頑張ったよね。


『…ごめん、私、死ぬみたい…』



私が死んだって知ったら…家族は、仲間は、どんな顔をするのかな。

出来損ないって笑われるかな。それともなんで死んだのって悲しまれるかな。
それともまた呪術師が一人死んだってだけで終わりかな。


でも私がここで死んだら。…霧尤の正体がいつかバレて、いろんな呪術師がここにやってきて、返り討ちにされて、呪術師が根絶やしになるかもしれない。

じゃあ、生きないとダメだ。でもどうやって?
そう思いながら、悲鳴をあげる全身を奮い立たせ立ち上がった。

…でも、立ち上がったところで何になるというのだろう。

なんかもういいや。考えるのも疲れた。きっと未来の私がなんとかしてくれるよね。



…そんなアホみたいな考えで脳内が埋め尽くされた時だった。






「ギャンッッツ!!」

『…え?』




目の前に広がった光景に、私は思考が停止した。

はるか彼方に吹っ飛ばされていくワンちゃん。それと同時にえぐれる地面。そして―――




…見慣れた、白銀の後ろ姿。




…どうして――






『…ご、じょう…?』





「……なーにが『ご、じょう…?』だよアホ。俺の意見振り切ったくせに…なに死にかけてる姿仲間に見せてんだよA」

『どうして…』



…なんで五条がここにいるんだろう。

私は単独で任務を任されたはずだし、何より五条がこの場にいるということ自体がこの場には一番不釣り合いだと思った。

それに、ここは山奥の更に山奥。いくら私であろうとあのワンちゃんであろうと呪力の流れを感知してここまで来るのは困難だと思う。

…だけど、そんな考えも良しに、五条が、ここにいる。さっき考えていた事が現実になったみたいだ。


そのことをやっと理解した私は、ふいに全身の力が抜け、その場にしゃがみ込んだ。
それを見た五条はギョッとして私のもとに駆け寄ってくる。



「ちょ、どうしたんだよ!?どこか怪我でもしたのか!!?」

『違う…違うの…なんか五条が来てくれたから安心しちゃって…』

「…なんだよそれ…でもまぁ、頑張ったんじゃねぇの」



そう言って軽く私の頭を撫でる五条。

その行為だけで、私はなんだか泣きそうになった。

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作者名:すば | 作成日時:2022年11月20日 20時

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