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ペアチケット ページ23





そしてその日の夜。




『…あー涼しい。お風呂上がりにこうやって当たる扇風機はサイコーだよ』



寮の部屋に元々備わっているシャワールームから出た私は着替えもそこそこに、濡れた髪をタオルでわしゃわしゃとふきながら扇風機に極限まで顔を近づけ涼んでいた。

わーと声を発すると風の影響で音が揺れ、まるでロボットというか宇宙人のような声になる。みんなも一度はやったことあるでしょ、コレ。
そんで我々は宇宙人だとか言いだす。もうお決まりだよね。

でも、そんな事を言っても面白味が一つもないので、今心の中で思っていることを口に出した。




『うちゅうじんはぁーいないのにぃーなんでじゅれいはぁーいるんですかぁー』




夜なので、普段よりは抑えめの声量でそう言い放った。


…幽霊も、宇宙人も、この世には存在しないのに。
なんで呪霊なんてものは存在するんでしょうかね。

…ホント、不思議な世の中に生まれたものだ。




『…あー…それにしても熱い…買い置きしておいたアイスでも食べよっかな』



扇風機に当たっても冷めない体温にげんなりした私は、少し前に買っておいた箱入りのアイスを冷蔵庫から取り出そうと立ち上がった。


…それと同時くらいだっただろうか



ピコン。

と、軽快な音が鳴った。




『ん? メール? 誰からだろ…』




さっきの音は私の携帯の新規メールの受信音。
この仕事柄、連絡の取り合いは重要な役割を果たすから、通知は一応全部オンにしてるんだ。

…まぁ任務だけじゃなく普段でも、というか遊びとかにも使ってるけど。別にそれに関してはいいよね。なにも間違ったことはしてないしてない。


そう思いながら携帯の画面を確認すると、メールの送り主は夏油からだった。

こんな時間に何だろう…と思いながら内容に目を通すと。



“「や、A。夜分にすまないね。突然なんだが、Aは最近見たい映画とかあったりするかい? 今、私の手元に映画のペア無料券があるから欲しかったら譲るんだが… 」”


『映画の無料券かぁ…って、こんなのどこで手に入れたんだろ夏油。…ま、いいや。とりあえず最近見たい映画いっぱいあるし譲ってもらおうかな』



最近始まったばかりのファンタジー映画気になってたんだよね。実は。
だからタイムリーというか実にありがたい話だ。ナイス夏油。



私は文字打ちに指を走らせた。







この時の私はまだ知らない。
…近い未来、その「ペア」が誰になるかなんて。

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作者名:すば | 作成日時:2022年11月20日 20時

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